中部経済新聞2016年1月掲載
【ちょっとお得】労働審判とは

 【質問】 退職した元従業員(労働者)との間で、退職金の支払いでトラブルとなり、労働審判手続を申し立てられてしまいました。どのような手続なのでしょうか。退職した元従業員(労働者)との間で、退職金の支払いでトラブルとなり、労働審判手続を申し立てられてしまいました。どのような手続なのでしょうか。

【回答】

労働審判手続とは、解雇や未払い残業代の支払いなど、労働者と使用者の間に生じた個別の労働紛争について、その実情に即して、迅速、適正かつ実効的に解決することを目的とした制度です。

申立ては地方裁判所に対してなされます。労働審判官(裁判官)と労働関係に専門知識を有する労働審判員2名(使用者側、労働者側各1名)で労働審判委員会を構成して紛争の解決を目指します。この点は裁判官のみが審理し判決を下す通常の訴訟とは異なります。

迅速な解決を目指すため、原則として3回以内の期日で終了します。この点も労働審判手続の特色です。

この3回の期日の中で、労働審判委員会は事実関係や法律論について当事者双方の言い分を聴き、争点を整理し、必要に応じて証拠調べも行います。また、当事者がお互い譲歩することで合意による解決の見込みがあれば、適宜話し合いを試みることができます。

そして、残念ながら話し合いの余地がない、あるいはまとまらない場合は、労働紛争の実情に応じた判断(労働審判)が下されるのです。 この労働審判に対して当事者に異議がなければ、その内容で確定しますが、不服がある場合には異議申し立てをして通常の訴訟に移行させることができます。 事案が複雑であるなど、労働審判手続に適さないと判断された場合にも、訴訟に移行することになります。

このように、労働審判手続は、訴訟に比べて、比較的短期間で柔軟な解決を図ることができる制度と言えるでしょう。

ただ、当事者の権利関係を明らかにする手続だという点は訴訟と同じです。ですから、事前に十分な証拠などを準備し、3回しかない期日の中で的確に主張をしていく必要があります。

したがって、法律の専門家である弁護士にご依頼いただくことが望ましいと言えます。