中部経済新聞2015年12月掲載 
【聞之助ダイアリー】
   組織内弁護士
−職場の相談に応じ紛争予防−

皆様は、弁護士の仕事にどのようなイメージをお持ちでしょうか?

法律事務所を構え、裁判所へ行き、依頼者の代理人として、依頼者のために法廷で弁論や尋問をしている姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。多くの弁護士は、法律事務所に所属し、法廷等で代理人として活動しています

しかし、弁護士の中には、法律事務所に所属せず、企業や各種団体に所属して従業員(職員)として働く組織内弁護士もいます。私も、市役所の職員として働く組織内弁護士の一人です。

ときには市の代理人として法廷に立つこともありますが、私は、普段、市役所の中にいて働いています。仕事の多くは、他の市役所職員からの業務上の法律相談です。

市役所の業務には、様々なものがあります。住民票の写しの交付などは、なじみがあるかもしれません。しかし、他にも、例えば都市計画や用地買収、福祉、子育て支援、ごみ処理等、市役所の業務内容は本当に多岐にわたります。

職員は、この幅広い業務において日々生じる法律問題に悩みながら仕事をしています。そして、その職員の相談に応え、助言し、ときには一緒に悩みながら問題の解決にあたるのが私の仕事なのです。組織内に弁護士がいるメリットは、法律問題が発生した場合に、気軽に相談することができる点です。また、案件の推移に即応して随時相談することもできます。

私は、組織内弁護士として紛争予防を意識して法律相談を受けるようにしています。また、職員の業務内容を深く理解し、業務に即した助言をするよう心掛けています。

他方で、相談内容に違法の疑いや不当と思われる点がある場合は、遠慮なく指摘しています。法律や条令に基づく適法かつ公正な職務を確保するために助言し、支援することが、市役所職員としての弁護士に課せられた役割だと思っています。

思った以上に多くの案件の相談があり、大変充実しています。新しい政策について相談を受け、意見が反映されると、やりがいを感じるとともに、責任の重さを感じます。

ところで、組織内弁護士の数は年々増えています。日本組織内弁護士協会によれば、その数は、国や私のような地方公共団体で働く組織内弁護士を除いても、1442名(平成27年6月時点)に達しているようです。

今後さらに組織内弁護士の数が増えれば、組織内に弁護士がいることが当たり前となり、皆様の弁護士に対するイメージも変わってくるかもしれませんね。