【盗作疑惑?】 |
最近,オリンピックのロゴマークのことで大変な騒ぎになりましたよね。それで,ニュースを見たうちの社員が,うちの会社のロゴマークも,ある水族館のロゴに似ている,パクリなんじゃないかって私にこっそり伝えてきたんです。 |
あの,社員の方が考えたというロゴですか。 |
そうです。名刺や営業のグッズに印刷してお客さんに配っているあのロゴです。まだ,その水族館から何か言われたわけではないし,私としても,水族館のロゴははじめて見て,そう言われればそうかなという感じなんですが,不安になってご相談にきました。 |
なるほど。ご趣旨はわかりました。 |
【著作権とは】 |
ああ,著作権という言葉は聞いたことがあります。 |
著作権というのは,著作物の様々な利用方法に関する権利の総称です。著作物については,著作権法では「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています。ロゴが単純な図形の場合には,著作物なのかそうでないのか,という問題になるときもありますが,今回はどちらのロゴもかわいらしいイルカのイラストですから,著作物に該当するのは間違いありません。 |
なるほど。 |
いわゆる「パクリ」は,盗作,つまり他人の著作物をそのまま使ったり,同じようなものを作ったりという意味で使われていますよね。これを法律的にいうと,そのまま使うのは著作権のうち複製権の侵害,同じようなものを作るのは翻案権の侵害ということになります。 |
なんだか難しい話になってきましたね。とりあえずうちのロゴは水族館のロゴそっくりそのままではないですよね。それでも著作権侵害になりますか。 |
全く同じではなくても実質的に同じものを再製すれば複製にあたります。また,翻案はいわゆる二次創作です。要するに既存の著作物とは別物だけど,既存のものをいわば元ネタにして類似性のある新しいものを作るという場合です。 |
【同一性,類似性の判断】 |
実質的に同一とか類似とか,判断が難しそうですね。 |
複製も翻案も,既存の著作物の「本質的特徴」を「直接感得」しうる程度の同一性,類似性があるかどうかが基準です。同一か類似かは,言ってみれば程度問題ですね。
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要するにパッと見て似てるかどうかということですか。 |
感覚的にはそうですね。でも,裁判では,どこが特徴的な表現なのか,共通しているのはどこか,相違点はどこか,と細かく分析して,類似性を判断します。もっとも,似ている部分があっても,よく使われるありふれた表現が共通しているだけでは,侵害にはなりません。 今回でいうと,どちらのロゴもイルカのイラストですが,デフォルメされたイルカのキャラクターは今までによく使われてありふれているので,これだけでは侵害になりません。 |
どちらもイルカのまわりに円が描かれていますね。形や目鼻立ちも似てるといえば似てるなあ。でも,うちのはにっこり笑って口を開いていて,水族館のは口をひらいてない。うちのは尾ひれに社名のイニシャルも描かれてる。うーん。もし裁判になったらどうなりそうですか? |
難しい判断になるかもしれませんね。著作権侵害の裁判は,一審と控訴審で判断が逆転することもよくあるんですよ。 |
【依拠性の要件】 |
ますます不安です。でも,社員が水族館のロゴを知らずに同じようなものを創作したってこともありえますよね。それでも著作権侵害になるんですか? |
それも重要な点です。侵害が成立するには「依拠性」が必要だとされています。既存の著作物と同一のものが作成されても,それが既存のものに依拠して再製されたものでなければ,侵害にはならないんです。仮に同一性や類似性があるとしても,作成者がもとのものを知らなければ,著作権侵害にはなりません。 |
でも,知っていたどうかなんて,本人にしかわからないですよね。どう判断するんでしょうか。 |
既存の著作物に接する機会があったか,既存の著作物が著名,周知なものか,また既存の著作物と酷似しているかどうか等が考慮されます。誰でも知っているものは,知らないと言っても普通 |
そうですか…。とりあえず,作った社員に確認してみます。でも,使い始めて何年かで愛着もあるし,お客さんにも好評なんです。私としては社員を信じたいですね。 |
いただいたクリアファイル,私も愛用してますよ。 |
何かあったら先生にお願いすることにします。 |
なにもないのが一番ですけどね。なにかあったら,すぐに相談してくださいね。 |