中部経済新聞2015年07月掲載
交通事故の損害交渉がうまくいきません−裁判外紛争解決の「ADR」活用を

 【質問】 交通事故に遭い加害者の保険会社と賠償の交渉をしていますが、うまくいきません。できれば裁判にはせずに早く解決したいのですが、なにか方法はありますか。

【回答】

直接の交渉、裁判以外の方法として、裁判所での調停やADRがありますが、今回はこのうちADRの利用についてご紹介します。 ADRとは裁判外紛争解決という意味で、裁判所ではない仲裁機関が関与して話し合いによる解決をはかるものです。交通事故に特化したADRで主要なものとしては、日弁連交通事故相談センター、交通事故紛争処理センターの示談あっせんがあります。

いずれも弁護士があっせん委員を務め、あっせん委員を通じて、加害者側の保険会社や共済と示談による解決に向けた話し合いを行うことができます。もちろんセンターでの交渉を弁護士に依頼することもできますが、裁判ではないため、一般人にとっては難しい書面を提出しなくても、自分でセンターに出向いてあっせん委員に事情を話し、中立な立場から話し合いを取り持ってもらうことができます。早ければ1、2回の話し合いで解決することもあります。

話し合いがまとまらない場合には審査の申出をして、当該事件のあっせん委員以外の弁護士で構成する各センターの審査会による裁定を受けることもできます。申立人は裁定に同意しないこともできますが、所定の保険会社や共済は審査の結果を尊重することになっています。審査の結果を尊重することになっている保険会社、共済は各センターにより異なりますので、加害者の保険会社、共済がどこかによって申立先を決めるのも手です。詳しくは各センターのパンフレットやホームページを参照して下さい。

また、交通事故紛争処理センターは東海三県では名古屋にしかありませんが、日弁連交通事故紛争処理センターは名古屋・岐阜・津にありますので、こういった事情もふまえて利用を検討するとよいでしょう。

解決のためどのような方法が適切かお悩みの場合は、是非弁護士にご相談ください。