中部経済新聞2015年1月掲載
隣家の屋根の雪が落ち,松の木が折れた 
−建物の所有者・占有者に「工作物責任」

 【質問】 今年は雪が多いように思いますが、もし、隣の家屋の屋根に積もった雪が落ちてきて、私の家の大切な松の木が折れてしまった場合、誰か責任をとってくれるのでしょうか。ちなみに隣の家は貸家みたいです。

【回答】

大雪は自然災害だから不可抗力だから責任は問えないとも思えそうです。

しかし、土地上の工作物(建物等)に「瑕疵(かし)」があり、その瑕疵と事故による損害との間に因果関係が認められれば、建物の所有者(貸家の場合、貸主)・占有者(貸家の場合、借主)に対し、その損害を賠償するよう責任を問うことができます。この責任のことを「工作物責任」といいます。

工作物責任が問われるのは、第1次的には占有者であり、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意を尽くしたことを証明できたときには、第2次的に所有者が責任を負うことになります。この場合の所有者の責任は無過失責任であり、建物の設置管理等に過失はない(十分に注意を払っていた)としても、責任を負うことになります。

では「瑕疵」とは何かという問題ですが、法律論では「通常有すべき安全性を欠如している場合」などと言われています。これは、結局、事案ごとに様々な事情を考慮して判断することになります。

また、このような事故が起きる前に、妨害予防請求として、落ちてきそうな危険な雪の塊があるのだとすれば、除雪を求めたり、多く雪が降るような地域の場合は、予め雪止設備の設置を求めたりすることも考えられます。

誰に何を請求するのか等難しい問題も含みますので、詳細は弁護士にご相談ください。