中部経済新聞2014年02月掲載
取締役個人から賃借の社屋を買い取るには【利益相反取引】

 【質問】 これまで当社は取締役個人から社屋を賃借していたのですが、今般、会社で買い取ろうと思っています。何か気をつけることはありますか?

【回答】

会社と取締役個人との売買は、売買代金が高ければ取締役個人の利益となる一方で会社の損失となり、売買代金が安ければ会社の利益となる一方で取締役個人の損失となります。このように会社と取締役の利益が相反する取引(利益相反取引)を行う場合、会社に損害が生じる恐れがあるため、当該取締役は、取締役会非設置会社においては株主総会の承認を、取締役会設置会社においては取締役会の承認を得なければならないとされています。なお、この利益相反取引を行う当該取締役は、取締役会でこの承認をするかを決める議決権を行使することはできません。

また、商品の売買など利益相反取引を継続的に行う場合には、同種の取引であれば個別の取引ごとに承認を得る必要はなく、包括的な承認でよいとされています。 この承認を得ないで行われた利益相反取引は原則として無効となります(ただし、第三者保護のための例外規定もあります)。

ご質問の場合も、会社としては、売買が無効にならないよう、株主総会あるいは取締役会にて承認を得ることに気をつける必要があります。なお、取締役会設置会社においては、利益相反取引を行った取締役は、実際に行われた取引が承認された取引の範囲内であることを明らかにするために、取引後遅滞なく当該取引の重要な事項を取締役会に報告しなければなりません。この報告を怠った場合について罰則(100万円以下の過料)も定められています。