中部経済新聞2013年11月掲載
別れても親は親 ー離婚の際には子どもの立場を考えて−

先生、困ったことになったよ。息子夫婦が離婚するって言ってるんだ。
それは大変ですね。
それで子どもたちの親権者をどちらにするかでもめているみたいなんだけど、母親が親権者になると子どもたちも母親が連れて行くんだろうなぁ。先生、何とか息子が親権者になる方法は無いものかね。

どちらの親が子どもを育てるか〜親権について

社長、お気持ちはわかりますが、少し落ち着いてください。まずは、親権というものについて、少し説明しますね。
あ、ああ、そうだな。
親権というのは、親が未成年の子どもを監護教育したり、子どもの財産を管理したりする権利や義務のことです。漢字で書くと「親の権利」となりますが、単なる権利ではなく、むしろ親の子どもに対する義務という側面もあります。
単なる親の権利じゃないってことか。
そうです。ですから、息子さんがお子さんたちの親権者になるのであれば、息子さんがお子さんたちをちゃんと育てていく必要がありますが、その点は大丈夫ですか。

や、やる気はあるはずだけど。

やる気はもちろん必要ですが、それだけでは駄目です。子どもを養育する能力の有無など、子どもにとって、父親と母親のどちらが親権者としてふさわしいか、よく考えて話し合ってください。

話合いがまとまらなかったらどうなるんだい。

話合いでまとまらない場合、最終的には裁判で決めることになります。裁判でも、親の事情、子どもの事情をそれぞれ考慮して親権者を決めることになります。

上の子はもう中学生だから、学校のこととか本人の希望もいろいろあると思うけど、そうした希望もちゃんと考慮してもらえるのかなぁ。

はい。例えば、父親と母親の双方が親権を主張して調停になった場合、調査官という裁判所の職員の方が子どもの意向を確認することになります。特に、子どもが十五才以上の場合、調査官は必ず子どもの意思を確認します。また、子ども自身が利害関係参加人として調停手続に参加することが可能な場合もあります。

子ども自身が手続に参加できるんだ。でも、手続に参加するって言っても、実際に何をしたらいいのかわからないんじゃない。
そうですね。そこで、子どもが手続に参加する場合、弁護士がその子どもの手続代理人となって、親の意向から独立した立場で活動するケースもあります。
なるほど。弁護士さんがついてくれるなら安心だね。

子どもと親との交流〜面会交流について

ところで、親権者が決まったら、親権者じゃない方の親は、もう子どもとは会えないのかい。

いいえ、そんなことはありません。片方の親が親権者でなくなっても、親子の関係が無くなるわけではありません。子どもの健全な発達のためには、父親及び母親の両方との交流や接触を続けることがとても大切です。また、親権者が子どもをちゃんと養育しているかを確認する機会にもなります。
そうだよねぇ。

はい。親権者とならなかった親が子どもと会うことを面会交流もしくは面接交渉と言います。親権者を決める際には、この面会交流についても取り決めをします。例えば、面会交流の日時、場所や頻度などを決めることになります。

仮に母親が親権者となった場合、ちゃんと会わせてもらえるか心配だなぁ。

その点も含め、子どものためにどうすれば良いのかを、親同士でよく話し合っていただくことが大切です。

子どもの生活費の分担〜養育費について

他には何か決めることはあるのかい。
養育費についても決める必要があります。親は、自分の子どもを扶養する義務を負っていますが、この義務は、その親が子どもの親権者であるかどうかに関わりません。夫婦が離婚すると、多くの場合、その夫婦は別々に暮らすようになり、子どもは親権者となった親と一緒に生活します。そこで、親権者とならなかった親は、一定の金額の養育費を支払って子どもが生活するための費用を分担することで、子どもに対する扶養義務を果たすことになるのです。
養育費にはそういう意味があったのか。
金額はどうやって決めるんだい。

それぞれの親の収入金額や子どもの年齢や人数などをもとに話し合うなどしてきめることになります。なお、養育費の支払いを怠ると、給料の差押えなどを受ける場合がありますので、注意が必要です。

子どもの生活費なんだからちゃんと払わないといけないね。
しかし、離婚するにあたっては、子どものために考えておくべきことがいろいろあるんだなぁ。息子に一度先生に相談するように言っておくよ。