中部経済新聞2013年1月掲載
【言わせてチョ】小選挙区制に問題

昨年の衆議院議員選挙は面白くなかった。投票したい政党が見当たらなかったからである。 おそらく、かなりの読者も同じ思いを抱きながら投票所に向かったのではないかと思う。結果はご承知の通り、支持率はそれほどでもないのに自民党が大勝した。

出来もしないマニフェストを掲げ、出来もしない普天間基地の県外移設を口にして混乱を招いた民主党に対しては、今後のためにもしっかりお灸をすえてやりたいと思う。しかし、今の財政赤字や格差社会、はたまた安全対策無しで原子力発電所を作り続けてきたのは自民党なのであり、こちらを支持する気にもなれない。さりとて、当初原発廃止を訴えていたのにいつの間にか核武装論者と合体したり、代表はクリーンそうだがその背後にそうでなさそうな顔がちらつく新顔の政党も、何となく胡散臭くて支持する気になれない。政策を見ると支持してやりたいと思う弱小政党も無いではないが、年の暮れという忙しい時期にわざわざ投票に行くというのに、むざむざ自分の一票を死に票とするのも面白くない。結局、投票しようという気になる政党がなかったのである。

そもそも、小選挙区制になった時点で、こうした事態は想定されていた。かつてのような中選挙区制であれば、一つの選挙区で複数の当選者が出るため、相対的に少数の政党でも議席を確保できる可能性があった。しかし、比例代表はともかく小選挙区では当選者が一人しかでないから、相対的に大きな勢力を持つ政党しか当選できない。自分の一票を死に票にしたくなければ、当選の可能性のある政党の候補者から選ぶしかないのである。

昔「究極の選択」という言葉が流行した。カレー味のウ○○とウ○○味のカレー、どちらかを選ばなければならないとしたらどっちを選ぶ?という話だったと記憶するが、まさに今回の選挙はそんな心境だった。

小選挙区制は政権交代を実現することができる、と言われた。確かに政権交代は実現した。しかしその結果、選挙民は本当に選びたい政党・選びたい候補者を選ぶ権利を奪われたのである。「もう小選挙区制は止めるべきだ。」そう愛知県知事が発言したようだが、全く同感である。我々は、カレー味のウ○○もウ○○味のカレーも食べたくはない。

(MG)