中部経済新聞2012年9月掲載
未公開株詐欺に遭ったら?
〜購入判断には細心の注意を〜

最近、未公開株を買わないかという勧誘を受けてね。
どんな話だったのですか。
営業担当者が電話で、「銀行の金利が低いので、社長にお勧めしたい商品があるのですが」と言ってきてね。それで、実際に会って会社のパンフレットを見せてもらったんだ。何でも、海外で養殖のビジネスをしていて、これから間違いなく成長する会社だから、未公開株を買わないかと言われたんだよ。
最近、未公開株を巡る消費者トラブルが増えているので、気をつけて下さい。
そうなんだ。そもそも、未公開株というのは、どういうものなんだい。
未公開株は、上場していない会社の株式です。そのため、流通性が乏しく、市場では売却できないおそれがあります。また、価値を算定することが非常に難しく、不当に高額で買わされたという相談が増えています。それに、実際に上場に至る場合も少なく、上場によって株価が大幅に値上がりするなどと言うことは、めったにないのですよ。
えっ、そうなの?
近年、未公開株を利用した詐欺が横行しているので、注意して下さいね。

未公開株を利用した詐欺とは、どんなものなんだい?


例えば、存在していない会社の株を買わせる手口です。

そういえば、パンフレットが立派だったので、もちろん存在するものだと思ったけど、登記を確認したわけではないな。
仮に、登記されていても、活動実態がなかったり、破産寸前の会社だったりする場合もあります。そんな会社の未公開株は、実際には価値はありません。
確かにそうだね。
最近は、未公開株を利用した詐欺の手口もかなり巧妙化しているんですよ。
えっ、どんな手口なんだい。

例えば、初めにA社の未公開株の勧誘の電話が入ります。次に、別の人から、「A社の未公開株をお持ちでないですか。高値で買い取りたいという人がいるので、探しているのですが。」というような電話がかかってくるのです。

なるほど。それで、初めに勧誘してきた人から、A社の未公開株を購入してしまうというわけだね。
そうなんです。この場合、A社の未公開株は、価値がないもので、購入後は、誰とも連絡が取れなくなってしまうというわけです。
巧妙に仕組まれているね。
さらに、悪質なケースでは、かつて未公開株の被害に遭ったことがある人に対して、「被害を回復します」と言って、手数料を騙し取るという手口もあります。

それはひどいね。では、未公開株を利用した詐欺被害に遭わないようにするにはどうしたらいいのかな?

まず、未公開株が現金化しにくく、価格の算定が難しいということや、詐欺の被害も報告されているということなどから、購入するかどうかを慎重に判断して下さい。
金融商品取引法29条では、金融商品取引業者としての登録がない業者は、金融商品である未公開株や社債を販売してはならないことになっていますので、販売業者が、登録業者かどうかを確認することも重要です。登録業者かどうかは、金融庁のホームページで確認ができます。
なお、無登録業者が有価証券等を販売した場合には、その契約は無効となります。また、無登録業者には、罰則が科せられています。

それでは、「必ず儲かりますよ」と言われて、未公開株や社債を買ってしまった場合に、説明と違うことが分かったらどうしたらいいの?

未公開株や社債を、嘘の事実を告げられたり、必ず儲かると断定的な判断を示されたりして、消費者が購入した場合には、消費者契約法4条1項により、契約を取り消すことができます。
また、実際には、ほとんど価値がない未公開株や社債を、高値で購入させられた場合には、暴利行為として無効となることがあります。さらに、価値がないものを価値があると信じて購入した場合には、錯誤により無効となることがあります。
加えて、販売業者が、嘘の説明をしていたような場合には、詐欺による取消が認められることがあります。
そのほか、販売業者がきちんと危険性の説明をしなかったため損害を被ったような場合には、説明義務違反により、損害賠償請求が認められることがあります。
ただ、現実には、返金してもらう前に販売業者と連絡が取れなくなるケースも少なからずあります。

やはり、お金を払う際に、慎重にならなければならないということだね。

そうですね。詐欺である場合には、振り込んだ口座の凍結が可能となる場合もあるので、できるだけ早く弁護士に相談して下さい。