中部経済新聞2012年5月掲載
【聞之助ダイアリー】
ネット法律知識の落とし穴

 今日は日本の各地で金環日食が観測された(はずである)。調べてみると、金環日食が国内で見られるのは1987年以来25年ぶり、本州で見られたものとしては129年ぶり、名古屋に至っては1080年以来932年ぶりとのことだそうだ。

 ところで、こうした情報は今やインターネットで検索をすればたちどころに得ることができる。便利な時代になった。

 法律についても同様で、法律相談をしていると、事前にインターネットで調べてこられる方は少なくない。中には、こちらが感心してしまうほど熱心に調べられたメモを持ってこられる方もいる。

 法律に関するページも様々である。裁判所のホームページでは裁判手続の説明や書式を調べることが出来るし、著作権については文化庁のホームページ、税法については国税庁のホームページが詳しい。また、具体的な法律問題については、法律事務所のホームページや無記名のQ&Aで説明されていることもある。

法律の知識について、調べれば情報が得られるというのは、とてもよいことだと思う。そもそも法律とは社会のルールであるから、一般国民に分かりやすいものでなければならない。身近な法律問題について知りたいとき、インターネットはとても役に立つ。

もっとも、インターネット上の知識を参考にする際には十分な注意が必要である。法律というのは、事情が異なれば導かれる結論も異なるものであるし、法律家によっても考え方の分かれる場合もある。一つの問題に対して2人の弁護士が正反対の結論を出すという場面をテレビ等でご覧になったことがある方もいるだろう。また、これは法律に限った話ではないが、インターネット上の記載がそもそも間違っている可能性もある。知識だけでは解決できないことも少なくない。

インターネットでの検索はお手軽で費用もかからない。だが、そのまま鵜呑みにしてしまうと思わぬ落とし穴にはまり、取り返しのつかないことになることもある。だからこそ是非一度は弁護士にご相談いただければと思う。場合によっては、弁護士の回答もインターネットで得られたものとさほど変わらないものに思えるかもしれない。けれど、その答えは、あなたの事情を聴き、あなたの希望を踏まえた回答となっているはずである。

翻って、私自身、単なる知識の伝達ではなく、目の前の依頼者のために何が最適かを考え、提示できるよう精進していきたいものである。

(H・K)