中部経済新聞2012年2月掲載
【ちょっとお得】
辞退した大学の入学金は帰ってくる?

 【質問】 大学入試に合格して、入学金や授業料を支払ったけれども、その大学には入学しないという場合、入学金や授業料は返還してもらえるのでしょうか。

【回答】 大学受験の場合、一校だけを受験するという受験生は少なく、いわゆる滑り止めで複数の大学を受験して、合格した大学の中から第一志望の大学に通学するというケースが多く見受けられます。そのような場合、受験浪人を避けるために、とりあえず先に期限を迎える大学に入学金や授業料などを納入しておくことになります。
 かつては、ほとんどの大学で、いったん納入した入学金や授業料は返還しない扱いとされてきましたが、平成18年、最高裁判所は、入学金の返還は認めませんでしたが、授業料や施設費などについては大学に返還を命じる判決を出しました。これを契機に、多くの大学で、一定の場合に授業料等を返還するように方針が変更されました。
 まず、入学金については、学生が大学に入学しうる地位を取得するための性格を得るための対価であると考えますので、入学金が不当に高額であるなどの特別な事情がない限り、大学は入学辞退者に対して入学金の返還義務を負いません。
 これに対して、授業料や施設費については、3月31日までに入学を辞退した場合には、大学は原則として授業料等の返還義務を負います。3月31日までであれば、大学も辞退者が出ることを予測でき、大学に損害が生じるとはいえません。そのため、授業料を返還しないとする特約は、消費者契約法9条に反して無効となるわけです。ただし、3月31日までの入学辞退者であっても、専願や推薦入学のように合格したら入学することを前提とする試験の合格者の場合には、特別な事情のない限り、大学は返還義務を負いません。
 他方、4月1日以降の入学辞退者には、原則として、大学は返還義務を負いません。