中部経済新聞2012年 2月掲載
暴力団排除条例(暴排条例)
昨年の紅白歌合戦、久々に紅組が勝ったね。
そうでしたね。
報道では、暴力団と関係がある歌手は出場できないとあったけど、厳しいチェックがあったのかな。
昨年までに全都道府県で、暴力団排除条例(暴排条例)が施行されたように、暴力団排除は社会的な要請となっていますからね。
暴排条例か、うちの業界団体でも話題になっているけど、よく聞く「暴対法」と何か違うの。
「暴対法」(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)は、名のとおり、主に暴力団員に対する規制を定めた法律です。
一方、暴排条例は、暴力団員のみならず、自治体や事業者・市民に対しても、暴力団排除のために禁止事項を設けるなど、規制をした条例です。
どうして我々まで規制されなきゃいけないの。
いくら暴対法等によって暴力団を取り締まっても、亡き寝入りしてしまう被害者や、金で済むのであればと用心棒代等を支払う人がいると、暴力団は根絶できません。だから社会全体で暴力団を根絶しようとして、定められました。
暴排条例の規制について、自分には関係ないと思わないで下さいね。ある民間の調査会社の調べでは、6割の会社が暴力団に対し、十分な対策をとっていないそうですよ。
ぎくっ。うちも対策とってないよ。ちょっと教えてよ。
条例ですので、制定した自治体によって多少の差はありますが、内容はほぼ共通しています。これからは、愛知県の暴排条例を念頭に説明しますね。
暴排条例では、暴力団が社会に不当な影響を与える存在であることを明記した上で、暴力団を利用しない、暴力団に協力しない、暴力団と交際しない、ということを基本理念としています。
その上で、@暴力団の排除に関する基本的施策、A暴力団排除に関する禁止行為、B暴力団排除特別区域(たとえば錦三などの繁華街)における禁止行為等について定めています。
具体的な内容については、表1を見て下さい。
表1

「公表」されちゃうこともあるんだ。信用商売だと厳しいね。
他に、社長に関係する大切なこととして、努力義務ではありますが、事業者は契約を締結するとき、その契約が暴力団の活動を助長等するものではないことを確認する等の措置をとらなければならないと規定しています。
最近、金融機関と取引するときに、よく見かけるやつかな。
人ごとじゃだめですよ。社長も、会社の契約書に取引の相手方が暴力団等に該当しないことを示した上で、仮に取引開始後にこれが発覚した場合には、契約を解除できる旨(暴排条項)を定めるなどの対応をして下さい。
後で取引先との基本契約書の雛形を見直してもらわなければならないなぁ。
その暴排条項ですが、雇用契約書にも入れるべきでしょうね。
もし、暴力団関係者を雇ってしまったら解雇できるようにするわけだね。
そうです。ただ、一方では、暴力団から足を洗った人がきちんと社会復帰できる環境を整えることも暴力団排除には大切です。
解雇されたら、また暴力団に戻ってしまう可能性もあるね。
今後は、そういった点も含め、社会全体で工夫をしていく必要があります。
そうだね。でも、発砲事件とかの報道を聞くと、正直、暴力団は怖いよ。契約書に暴排条項を入れるという準備はできても、問題が起きたとききちんと対応できるかな。
確かに。でも、社会が一体とならなければ暴力団は排除できません。もし、トラブルが発生したときは、直ぐに私に連絡下さい。また、お近くの警察署や、表2のような相談窓口も利用して下さい。

表2