中部経済新聞2011年6月掲載
株主総会
わが社も株主総会が迫ってきたなぁ。
これを機に、株主総会について一度おさらいしてみましょうか。
そもそも、どうして株主総会を開かなければならないんだい。
株主総会というのは、株主の総意によって会社の意思を決定する機関です。会社の実質的な所有者は株主ですので、その株主が会社の基本的事項等を決めるために株主総会を開催する必要があります。

具体的には、どんなことを決めるのかな。
取締役会を設置している会社では、法律上定められた事項および定款で定めた事項を決めます。法律上定められた事項としては、取締役の選任・解任や定款の変更などがありますね。他方、取締役会を設置していない会社では、会社に関する一切の事項について決議することができます。
うちは株主が身内だけなんだけど、それでも株主総会は開かないといけないのかい。
はい。開く必要があります。ただし、株主総会の決議事項について、議決権を行使できる株主の全員が書面又は電磁的記録により同意をした場合には、その事項を可決した総会決議があったものとみなされます。また、同様に、取締役が株主総会に報告すべき事項についても、株主全員に通知し、株主全員の同意が得られた場合には、株主総会への報告があったものとみなされます。
 株主総会を開催するには招集通知を全株主に送るんだよね。
そうですね。通常であれば、株主総会の日の2週間前までに、非公開会社であれば原則1週間前までに招集通知を発送する必要があります。
実は、我が社の株主で東北に住んでる身内がいるんだけど、3月の大震災で被災してねぇ、今も避難所で生活しているらしいんだよ。そういう場合に、招集通知が届かなかったらどうすれば良いんだろうか。
それはご心配ですね。但し、招集通知については、株主名簿に記載された住所に発送さえしていれば、到達しなくても法的な問題は生じないものとされていますのでご心配はいりません(発信主義)。また、株主総会は、株主全員の同意がある場合には、原則として招集の手続きを経ることなく開催することができます。
それなら問題はなさそうだ。ちなみに、今回のような大震災が東海地方で生じた場合、定時株主総会が当初の予定通り開催できないことも考えられるけど、その場合は開催を延期しても構わないのかな。
多くの会社は、その会社の事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催していますね。法律上は、「定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」と定められており、原則としては毎年同じ時期に開催することになりますが、今回の大震災のような場合には、やむを得ず延期することも許されるでしょうね。その場合には、株主総会が開催可能となった時点で開催すれば、法の要請を満たすものと考えられます。
なるほど。わが社のように定時株主総会の開催時期を定款に定めていても問題ないのだろうか。
はい。特定の時期に定時株主総会を開催するという定款の定めのついては、今回の大震災のような極めて特殊な事情により定めていた時期に開催することができない場合にまで、形式的・画一的に適用しなければならないとは考えられません。したがって、今回のような大震災の影響により、定款に定めた時期に定時株主総会を開催することが出来ない状況が生じた場合には、時期の変更を余儀なくされた理由を付した上で開催すればよく、開催の時期が定款所定の時期よりも後になったとしても、定款に違反することにはならないと思われます。
そのあたりは、柔軟に考えれば良いんだね。
そうですね。ただし、議決権行使の基準日を設けているような場合、基準日株主が行使することの出来る権利は、基準日から三ヶ月以内に行使するものに限られます。したがって、定時株主総会の延期に伴い、改めて基準日を設定することも考えられますが、その際には、新たな基準日の2週間前までに、その基準日および基準日株主が行使できる権利の内容を定める必要がありますので注意してください。
むぅ。新たに手続きが必要な場合もあるのか。そのあたりは、相談しながら進めた方が良さそうだなぁ。
そうですね。そうした場合には、我々弁護士にご相談ください。