中部経済新聞2011年1月掲載
修習生の給費制一年延長

愛知県弁護士会会長 齋藤勉

【給費制延長の御礼】

 昨年一一月二六日、裁判所法を改正する法律が国会で成立し、司法修習生(司法試験に合格し、弁護士・裁判官・検察官という法曹になるための研修を受ける者)への給与支給(給費制)が、本年一〇月三一日まで一年間延長されることとなりました。

 私たちの国全体が財政難の厳しい状況にある中、給与の支給を一年間延長することができたのは、皆様のご理解とご協力があったからであり、心から感謝し御礼を申し上げます。当会にも三万五二五五筆もの給費制維持の署名を寄せていただき、大変大きな力になりました。本当にありがとうございました。

【一年間に与えられた課題】

 しかし、今回の国会の議論の中で、これから一年の短い間に、より大きな課題に取り組まなければならないことになりました。

 今回の衆議院での附帯決議では、政府・最高裁に「個々の司法修習修了者の経済的状況を勘案した措置の在り方」「法曹の養成に関する制度の在り方全体」について検討し、必要な措置を講ずることを求めています。

 昨年七月に本紙でも取り上げた通り、法科大学院生の多くが多額の借金を抱えています。法曹としてのスタート時点で多額の借金を背負う状況は決して望ましくありません。また、「お金持ちしか法曹になれない」制度で、本当に皆様の権利を守る多様な法曹を育成できるでしょうか。司法修習生の給費制だけでなく、法科大学院制度も含めた法曹養成制度全体のあり方について、抜本的な検討が必要です。

   行政も立法も基本的には最大多数の最大幸福を目指すものです。これに対して司法は、最大多数の最大幸福から落ちこぼれた、いわゆる弱者を救済するために存在するものです。だからこそ司法制度を担う法曹は公共的使命を担う存在であり、国の予算を用いて養成すべき社会資源です。経済的な理由から法曹への道を断念せざるを得ない事態が発生することは何としても避けなければなりません。司法修習生の給与が恒久的に支給される制度とし、より良い法曹養成制度とするため、皆様の一層の御理解と御支援を何卒宜しくお願い申し上げます。