中部経済新聞2010年9月掲載 
ちょっとお得
株主から貸借対照表などの計算書類の謄写請求があった場合

 【質問】 私が経営する会社の株主さんから,貸借対照表など,計算書類のコピーが欲しいという申し入れがありました。コピーを用意してお渡ししなければいけないのでしょうか。

【回答】 株式会社は,計算書類及び事業報告とこれらの附属明細書を本店に備え置かなければなりません。そして,株主及び債権者は,株式会社の営業時間内であればいつでも,計算書類等の閲覧や謄本または抄本の交付を請求することができます。

 したがって,ご質問のように,株主から,計算書類の謄本(コピー)の交付請求があった場合には,会社は,請求に応じて計算書類等の謄本を交付しなければいけません。なお,会社法では,株主及び債権者は,計算書類等の謄本の交付請求をするには,株式会社が定めた費用を支払わなければならないとされていますので,計算書類等の謄本を交付する際には,会社は請求者に必要な費用の支払いを求めることができます。

 前回ご説明した株主名簿については,株主は閲覧や「謄写」を請求することができるとされていました。一方,計算書類等については,株主は閲覧や「謄本または抄本の交付」を請求することができるとされています。ですから,計算書類等については,会社の方でコピーを用意して交付する必要があります。また,株主名簿については,会社法上,株主は,請求の理由を明らかにして閲覧等を請求しなければならず,会社は,一定の場合には請求を拒むことができるとされています。これに対して,計算書類等については,このような定めがありません。しかし,不当な目的による請求については,権利の濫用であるとして請求を拒む余地があります。ただ,どのような請求が権利の濫用にあたるかという判断は難しいものですから,詳しくは弁護士にご相談ください。