中部経済新聞2010年8月掲載
【ちょっとお得】 
株主名簿の閲覧、謄写について

 【質問】 私の経営する会社の株主さんが、株主名簿を見せて欲しいと言ってこられましたが、目的もわからないのに株主名簿を見せる必要があるのでしょうか。

【回答】 株式会社は、会社法上、株主名簿を作成して、本店に備え置くことが義務付けられています。株主名簿には、@株主の氏名または名称及び住所、A株主の有する株式の数、B株式の取得日、C株券発行会社の場合には株券の番号を記載することになっています。

 株主は、原則として、会社の営業時間内であればいつでも、株主名簿の閲覧または謄写(コピー)を請求することができます。しかし、中には、会社の業務を妨害する目的や手に入れた株主情報を第三者に売却する目的など、必ずしも正当とは言えない目的で閲覧や謄写を請求してくる場合があります。そこで、会社法は、株主が株主名簿の謄写や閲覧を請求する場合には、その理由を明らかにしなければならないとしています。

 こうして請求を受けた会社は、次の場合を除いて、請求を拒むことができません。

  1. 請求者がその権利の確保または行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき
  2. 請求者が会社の業務の遂行を妨げまたは株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき
  3. 請求者が会社の業務と実質的に競争関係に有る事業を営みまたはこれに従事するものであるとき
  4. 請求者が閲覧または謄写により知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき
  5. 請求者が過去2年以内に閲覧または謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるとき

 従って、まずは株主さんに請求の理由を明らかにしてもらい、拒否できる場合かどうかを検討することになります。なお、この閲覧・謄写請求権は債権者にも認められています。