言わせてチョ 〜「モンスターペーシェント」問題

 

「モンスターペアレンツ」、という言葉をご存知だろうか。学校に対して、自己中心的で理不尽な要求を繰り返す保護者のことを意味する和製英語である。

私は、比較的よく医療機関から相談を受けるが、現実の医療現場でも、同じように「モンスター」と比喩される行動をする患者がいる。俗に「モンスターペーシェント」と呼ばれる。もちろん、医療機関も、有益なクレームに対しては誠実に受け止めるべきだが、話を聞く中では、有益無益の次元を超え、まさに「モンスター」的な行動をする患者も多い。 

特に二次・三次救急を扱う病院で、夜間にこの種の問題が発生すると大変である。

二次・三次救急医療とは、本来、「入院治療」を必要とする重症患者に対応することを目的とするものである。軽症の患者に対し、二十四時間営業で高度医療サービスを提供するものではない。しかし、現実には、明らかに「入院治療」の必要がない(時には加療の必要性がない)患者で夜間救急外来が混雑していることはご存知かと思う。それ自体も深刻な問題だが、それに加え、「モンスター」的行動をとる患者への対応に悩まされるのである。

例えば、救急外来として最低限の処置を施し昼間に通常診察を受けるよう促すと、「ちゃんと診察しろ、入院させろ」などと怒鳴り、医師や看護師に暴力を振るう患者がいる。また、外来のロビーで、飲酒し、帰宅を促しても居座り続ける患者もいる。夜間、刃物を持ち歩いている患者がいたため、警察に通報したら、「患者様を犯罪者にするのか」と怒鳴られたケースも聞き及ぶ。

病院関係者は、ただでさえ忙しい夜間救急業務に従事しているのに、そのような患者に対応するため、本来の仕事以外で不必要な労力を割かれ、一時的にしろ、医療機関の機能が麻痺することもある。救急病院の「患者たらい回し」問題も、「入院治療」の必要のない患者がベッドを占拠していることも原因の一つとして考えられる。

「モンスターペーシェント」問題は、昨今、社会的問題となっている「医療崩壊」の一つの原因なのだ。

「医療崩壊」に対しては、特定診療科の医師不足問題など、ようやく国家規模で対策が検討されるようになったが、相次ぐ政治家の失言からわかるように、今一つ危機感がない。

しかし、病院が崩壊することは現実に起きている。自分がいざという時に「たらい回し」されないよう、「モンスターペーシェント」問題にも目を向けてもらいたい。