法律事務所の窓辺から


大学入試センター試験の出願が締め切りとなり,いよいよ本格的な受験シーズンの到来である。これからの季節,電車の中などあちらこちらで,受験勉強に励む受験生の姿を目にすることだろう。

彼らの姿を目にするたび,私も,これまで受験してきた試験のことなどを思い出してしまう。

大学入試,司法試験など,私もいくつかの試験を受験してきた。そして,私がこれまで受験してきた中で最後の試験になったものが,司法修習生考試,いわゆる「二回試験」である。ご存じの方も多いとは思うが,司法試験に合格したからといって,ただちに法曹資格を取得できるわけではない。司法試験に合格した後は,司法修習生として研修を受け,その上で,卒業試験ともいうべき「二回試験」に合格してはじめて法曹資格を取得することができるのである。つまり,「二回試験」は,法曹資格を取得するための最後の関門である。

最後に受験した試験だけあって,「二回試験」に関する記憶はいまだに鮮明である。最終関門と向き合う緊張感などは,なかなか記憶から消えてくれないようで,「二回試験」の試験会場は,今でも時々夢に出てくる。

これから試験に挑む受験生たちも,同じく重圧を感じながらも試験に立ち向かうのだろう。彼らの健闘を祈りたい。

さて,受験勉強には,どのような試験に向けてのものであっても,試験に合格するという明確な目標があったように思う。そして,受験生だった私は,その目標に向かってただひたすらに勉強をして,合格を目指していけば良かった。もっとも,そのころの私は,早く試験から解放されたいと願うばかりだったのだが。

しかし,現在の私はどうだろうか。これといった目標もなく,日々の業務に追われているばかりではないか。目指すべき目標を意識して,それに向かって努力することなど忘れてしまっている。その結果,がむしゃらに前に進んでいた,あのときの力を失ってしまっているのではないか。それぞれに夢を抱き,目標に向かって力強く進む受験生らの姿を目にする季節には,ついついそのようなことを考えてしまうのである。

彼らに負けてはいられない。何の目標もない,などと嘆いている場合ではないのだ。かつての願いどおり,試験からは解放されてしまったが,目標に向かって努力する姿勢だけは失いたくないものである。