法律事務所の窓辺から

法政実習で決めた覚悟 〜垣間見た「法律の正義」〜



私は、大学での正式授業科目である法政実習として募集された、所謂「インターンシップ」への参加を希望し、十日間という短い期間ではあったが、法律事務所で実習をさせていただいた。そして、実習を終えた今、弁護士という職業に対して新たな理解が開けた私は、これまで以上に魅力を感じ始めている。

実を言うと、私はインターンシップに参加するかどうかを直前まで悩んだ。その理由は、私自身、これまで弁護士になることを目標に勉強を進めてはいたものの、どこか「真面目でお堅い職業」というイメージがあったため、まだまだ法的知識も思考方法も未熟で、決して優等生タイプではない私がそのような世界に身を置いて本当に大丈夫なのか、耐えられるのか、といった不安が少なからずあったからだと今更ながら思う。

しかし、この不安は杞憂に終わった。私を指導してくださった弁護士をはじめ、実習中に出会った弁護士の方々は皆、とても親しみやすい人達ばかりであった。会話一つを例にとってみても、初めのうちは実務の興味深い話をしてくださるが、そこに一人、二人と他の弁護士が加わり出すことで話は徐々に横道にそれ、最後には、どうでもよい話、くだらない話で盛り上がる。些細な日常の一コマかもしれないが、弁護士を「法曹」として無意識のうちに偶像化し、緊張していた私にとっては、「弁護士といえども自分たちと何ら変わりの無い人達ばかりだ。」と安心できた瞬間であった。

もちろん、仕事の様子から気付いたことも多い。これまで私は、弁護士というのは依頼人の利益の追求を第一に考えるものだと想像していたが、社会正義も見据えた上で問題の解決を図るというスタンスで事件の処理を行っている点が非常に印象的であった。このような社会正義も見据えた上で依頼者の利益の実現を目指す姿は、私の考える「法律の正義」と一致しており、そこに弁護士という職業のやりがいが見出せるのではないかと感じた次第である。

実習期間中に、ある弁護士が次のような激励をしてくださった。「今、君は目の前にあるとても高い山を登ろうとしている。その山を登りきるためには相当の覚悟と理由が必要だ。」説得力のある有り難いお言葉である。その横から聞こえてきた「山登りでは下山する勇気も必要だぞ。」との教えに少しだけ耳を傾けつつも、登ることへの魅力を感じ、覚悟を決めたこの十日間であった。