言わせてちょ

救急患者のたらい回し




一 以前から時折問題となっていたことであるが、最近、救急患者のたらい回しが新聞に掲載されることが多い。治療が遅れたために命を落とされた方もおられるようである。人の生命・身体を守るべき医師・病院が何故、救急患者の受入を拒否するのかと憤慨して、医師法を調べた。

 医師法一九条は、医師は、診察治療の要求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない、と定めている。そうすると、救急患者の受け入れ拒否をした医師が何らの処分も受けていないのは、受け入れ拒否に「正当な事由」があったためと考えられる。

二 そこで、正当な事由とは何かであるが、別の救急患者の手術中であった、ベッドが満床で空きベッドがなかったなどの事情がこれにあたると言われている。

それでも人の命にかかわる業務なのだから何とかできないかと考えてしまう。マスコミでも、医師または病院の基本的モラルの問題とする意見や、救急医療体制の制度的不備とする意見が多いようである。

 データ的にも、午前〇時から午前二時の間に診療拒否が最も多かったようであり、医師・病院が横着したのではないかと邪推したくもなる。

三 しかし他方で、救急車を拒否した病院の当直医師がその晩、一睡もできずに救急患者等に対応していたとの話もある。また、医師も人間であり、休むべきときに休息を取れなかったばかりに医療過誤が起きてしまい訴訟となったのでは、患者も医師も不幸である。利用者側でも、明らかに緊急性がないのに救急車を利用したり、病院までのタクシー代わりに救急車を呼ぶ人もいるようである。

四 このような問題に対し、東京都では民間の救急車制度を創設し、本当に緊急性のある人のみを本来の救急車で搬送する制度を導入したようである。また、一部では、救急患者を緊急性の段階で分類し、結果的に救急搬送の必要がなかった患者の医療費を高くする提案もあるようである。

 しかし、それでは患者側に緊急性の要否の判断を要求することになってしまう。生半可な法律知識で対応したばかりに苦労する事態に陥った相談者を仕事で見ているだけに賛成しかねる。

五 そこで提案であるが、救急救命士の医師版のような制度を創設することは無理であろうか。医師不足との声があることも承知しているが、消防署に救急救命医師に常駐してもらい、一一九番通報で事情を聞いて緊急性を判断するのである。電話だけによる診断であるから、明白な誤診以外は免責とするのである。そうすれば、緊急性のない患者に救急車や医師が時間を取られる危険は減ると思うのだが・・・。