男女雇用機会均等法が変わりました。

間接差別も禁止

男女雇用機会均等法(均等法)は職場における男女平等を目指して昭和六〇年に制定された法律です。その後、セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)の規定を創設する等の改正がなされましたが、間接差別や男性差別、母性保護等の課題が残っていたため、本年四月より改正法が施行されました。以下では改正のポイントを説明します。

一、男女双方に対する差別の禁止
従前の均等法では女性に対する差別のみ禁止されていましたが、男性に対する差別が許されるわけではありませんし、実際に男性に対する差別事案が増加傾向にありました(例:看護師資格を取得しても男性であることを理由に採用されない)。そこで、改正により男女双方に対する差別が禁止されました。
二、差別禁止対象の追加・明確化
従前は「募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇」について性別による差別が禁止されていましたが、現実にはこれら以外の事項に係る差別が見受けられました。例えば、自己の責任で買付けできる金額の上限に男女差を設けるとか、リストラにあたり女性正社員のみパートへの変更を強要するといった事案です。そこで、改正により、禁止事項に「降格、職種・雇用形態の変更、退職勧奨、労働契約の更新(雇止め)」が追加されるとともに、「業務の配分・権限の付与」も配置の一つとして禁止されることが明確化されました。
三、間接差別の禁止
間接差別とは、外見上は性別による差別と認められなくても、実質的には、合理的な理由なく一方の性に相当程度の不利益を与える措置を言います。女性を採用したくない場合に、男性のみ募集することは明らかに均等法違反になるため、一定の身長体重を有することや全国転勤できることを募集の条件とするような事案です。とりわけ、転勤については、多くの女性が結婚、出産や介護のことを考え、転勤に積極的になれず、就職を諦めざるを得ないという結果を招いていました。 そこで、今回の改正では、厚生労働省令(省令)で列挙する次の3つの場合について、合理性がある場合を除き、間接差別として禁止することになりました。

  1. 募集・採用に当たり、一定の身長、体重または体力を要件とすること。
  2. コース別雇用管理制度における総合職の募集・採用に当たり、転居を伴う転勤を要件とすること。
  3. 昇進に当たり、転勤経験を要件とすること。

もちろん、これらの要件に「合理的な理由」がある場合には間接差別には該当しません。例えば、重量のある大きな荷物を安全に運搬するために一定の身長体重や体力が必要とされる場合にそれらを要件とすることには合理性が認められるでしょうし、広域にわたり展開する支店がありそこでの経験を積むことが管理職として特に必要とされる場合に転勤を要件とすることにも合理性が認められるでしょう。ただ、安易に「合理的な理由」を認めては間接差別の禁止を骨抜きにしてしまいますので、体力や転勤が特に必要かどうかを厳密に判断することが求められます。
四、母性保護の強化
従前から禁止されていた妊娠・出産・産休を理由とする解雇だけでなく、労働基準法の母性保護措置や均等法の母性健康管理措置を受けることなどを理由とする退職勧奨、雇止め、パート等への変更などの不利益扱いも禁止されることになりました。また、妊娠中や産後一年以内の解雇は、妊娠等が理由でないことを事業主が証明しない限り無効となりました。
五、セクハラ対策の強化
改正により男性に対するセクハラも規制の対象となりました。また、従前、事業主に課せられていたのは単なる配慮義務でしたが、改正により、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられました。
六、企業名公表の拡大
事業主が、セクハラ対策あるいは母性健康管理に必要な措置を講ぜず、是正勧告にも応じない場合には、企業名が公表されることになりました。皆様、ご注意ください。

均等法改正のポイント

項  目現 行 法改 正 法
性別による差別禁止女性差別を禁止男女双方に対する差別を禁止
差別禁止対象の追加、明確化募集から定年・解雇に至る各面で差別禁止降格、職種・雇用形態の変更、退職勧奨、雇止めを差別禁止に加え、業務の配分・権限の付与を配置に含むことを明記
間接差別の禁止規定なし身長体重体力、転勤等の要件について、合理性がない場合には、間接差別として禁止
母性保護の強化妊娠・出産・産休取得を理由とする解雇の禁止退職勧奨その他の不利益扱いも禁止。妊娠中・産後1年以内の解雇は妊娠等が理由でないことを事業主が証明しなければ無効。
母性健康管理に関する是正勧告に応じない場合には企業名公表。
セクハラ対策女性に対するセクハラについて、事業主に配慮義務男性に対するセクハラも含め、事業主に措置義務。
是正勧告に応じない場合には企業名公表