事業承継対策はお済みですか?

中小企業について,近時大きな問題となっているのが「事業承継」問題です。一言で言えば「後継者に対し,いかにして円滑に事業を引き継ぐか」ということです。
これまでにも,経営者の相続を機に相続人間で後継者争いが起こったとか,社内で後継者に対する理解が得られず幹部や従業員が離れていった,などといった例(事業承継失敗の典型例です。)はよく聞く話で,事業承継問題は昔から存在する問題ではあるのです。
では,なぜ今「事業承継」が大きな問題として取り扱われているのでしょうか。

事業承継対策の必要性
我が国全体の高齢化が叫ばれる中,中小企業経営者も高齢化が進んでおり,その平均年齢は約57歳です(【図1資本金規模別の代表者の平均年齢の推移】)。中小企業経営者自身が考える引退予想年齢の平均は約67歳であるという調査結果(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成17年度高齢者活用に関する実態調査報告書」平成18年3月)もあり,これらを総合すると,我が国の中小企業の多くが今後10年程度のうちに世代交代の時期を迎える計算です。すなわち,多くの中小企業が今後10年程度のうちに,「事業承継」に直面することとなるのです。
冒頭の例に見ましたように,中小企業にとっての事業承継は会社の経営状態に大きな影響を与えかねない問題であるため,多くの中小企業が事業承継に直面しつつある今,大きな問題として取り上げられているのです。

図1:資本金規模別の代表者の平均年齢の推移


事業承継計画をたてるには
事業承継計画を立てるには,第一段階として会社の現状を正確に把握することが必要です。検討すべき要素としては以下のような事項が考えられます。

  1. 会社の経営資源(従業員構成,資産やキャッシュフロー等)
  2. 会社の経営リスク(負債,将来の展望等)
  3. 経営者自身の状況(保有自社株式数,個人資産・負債等)
  4. 後継者候補の有無(親族,従業員等)
  5. 相続発生時に予想される問題点(相続税,遺産分割等)

第二段階として,先に把握した会社の現状に照らし,最良の事業承継方法を選択します。事業承継の方法は,大きく@親族内承継,A従業員等への承継,B合併,事業譲渡等(M&A)の3種類に分けることができます。

第三段階として,具体的な事業承継計画を作成します。例えば,中小企業に多く見られる親族内承継であれば,経営者の引退時期を見据え,後継者教育をどのタイミングでどのような方法で始めるか,経営者の保有する自社株式や財産を誰にどのように移転するか,取引先や社内からの理解をどのように得ていくか等々,中長期的(10年程度)な経営計画とともに事業承継計画を作成する必要があります。引退の10年前から準備に取り組んで早過ぎるということはありません。
また,事業承継計画作成にあたっては,遺言や生前贈与,合併・会社分割,種類株式の発行など,相続法,会社法,税法等の広範囲にわたる専門知識を要する場面があるため,適宜専門家(弁護士,公認会計士,税理士等)からアドバイスを受けることも必要です。

事業承継円滑化への取り組み
「事業承継」が多くの中小企業にとって共通の問題であり,中長期的な計画のもとで準備する必要があるにもかかわらず,中小企業経営者の計画的な取り組みはなかなか進んでいないのが現状です(【図2 現経営者の事業承継の準備状況】,【図3 承継のための先代経営者の取り組み内容】)。
そこで,多くの中小企業経営者の方々に事業承継問題の重要性を知って頂き事業承継を円滑に進めるため,「事業承継ガイドライン」(事業承継協議会作成)及び「事業承継ガイドライン20問20答」(中小企業庁作成)が公表されています。また,愛知県弁護士会においても,平成19年9月10日より「事業承継」相談専門窓口を開設し,事業承継に関する相談を受け付けています。
将来的には,(財)中小企業基盤整備機構の各支部に事業承継コーディネーターを配置し,商工会議所・商工会や専門家等と連携し,中小企業の事業承継をサポートする「事業承継支援ネットワーク」を構築する構想も現在進行中です。

図2:事業承継の準備状況


図3:承継のための先代経営者の取組内容


事業承継ガイドライン(事業承継協議会)
事業承継ガイドライン20問20答(中小企業庁)
■愛知県弁護士会「事業承継相談」
【пz052(203)1651  【受付時間】月曜日〜金曜日 午前10時〜午後3時 【相談料】30分につき5.250円