裁判所の裁判や調停手続でもなく、弁護士会が独自に運営する制度であり、現在、全国の一九弁護士会に設置されている。
民間の裁判外紛争解決機関(ADR)として、これまで数多くの紛争を双方の話合いによって解決してきたという実績を持っている。
ここで取り扱う紛争の種類は、特に制限はない。夫婦関係や離婚、親子関係、相続・遺産分割、貸金や借金、相隣関係や職場での労働問題、不動産を巡るトラブル、会社同士の問題など。
このような様々な紛争について、できるだけ「気軽に」利用でき、「費用の心配もなく」、「話合い」でなるべく「早く」紛争を解決しよう、というのが、この制度のねらいだ。
誰でも、紛争の実情と相手方にどんなことを要求したいのかを書面に記載して、申立をすることができる。どんな紛争についても申立手数料は15、000円(税込)。
中でも、愛知県弁護士会の場合に特に注目されるのが、今回のB子さんのような建築紛争や医療事故に関する紛争だ。
このような紛争は、建築・医療といった専門性の高い分野でのトラブルなだけに、一般市民にとっては、なかなか自分だけでは太刀打ちができない場合が多い。往々にして相手方(建築業者・医療関係者)に反論できないまま、泣き寝入りをせざるを得ないこともある。
また、被害の迅速な回復が非常に重要になってくるが、民事訴訟を提起しても一定の時間と費用がどうしても必要となってしまう。
愛知県弁護士会のセンターは、このような専門性の高い紛争の解決に備えて、センター内に弁護士委員と専門家委員(建築士・医師など)の名簿が用意されている。この名簿の中から、当該事案の解決にふさわしい「あっせん・仲裁委員」の人選を行う。
センターでの手続は、弁護士会館内の話合いだけにはとどまらない。建築紛争であれば、弁護士委員と建築の専門家委員が現地に出向き、プロの目で現状の把握と原因究明に乗り出すこともある。また、週末や夜間でないとなかなか時間の取れない人には、あっせん・仲裁委員の事務所内で期日を開く、といった臨機応変の対応も可能だ。