愛知県弁護士会の『あっせん・仲裁センター』って、
ご存じですか?


ご近所の奥様二人が話しています。


A: お宅の息子さんご結婚されるんですって?よかったわねぇ。
B:

ありがとう。それでね、この前、自宅を増改築したのよ。今度結婚する息子夫婦が同居してくれるって言うから。
A: それなら二重におめでたいじゃない。その割には、なんだか浮かない顔してるわねぇ?
B:

そうなのよ。この前の台風で、増築したばかりの部屋から雨漏りがすごかったの。天井の白いクロスなんかも染みだらけだし。新婚夫婦の住む部屋なのにねぇ。
A: 建築業者は何て言ってるの?
B:

最初はすぐに修理すると言ってたんだけど、後から連絡が入って、予想外の大雨だったのと、古い母屋の天井自体に雨漏りの原因があるので、追加工事代金が必要になります、だって。
A:

えーっ! 予想外の大雨かどうかは別にしたって、増築したばかりの部屋からの雨漏りなんて、普通だったら考えられないでしょう。
B:


業者は、うちの工事に問題はない、雨漏りというのは経路が特定しづらいんだ、というばかりなのよ。増改築と結婚式でお金が要るのにどうしろって言うの?息子たちも、天井に染みのある部屋じゃ新婚気分が台無しよねぇ。
A: でも雨漏りの原因はまだはっきりとしていないんでしょう?
B: ええ。業者は古い家の屋根の方だ、って言い張ってて、お互いに平行線なの…。
A:

そうだ、弁護士会の「あっせん・仲裁センター」って、知ってる?あそこなら何とかなるかも知れないわよ。

■愛知県弁護士会にこのあっせん・仲裁センター(以下「センター」という)が設立されたのが今から10年前。


裁判所の裁判や調停手続でもなく、弁護士会が独自に運営する制度であり、現在、全国の一九弁護士会に設置されている。

民間の裁判外紛争解決機関(ADR)として、これまで数多くの紛争を双方の話合いによって解決してきたという実績を持っている。

ここで取り扱う紛争の種類は、特に制限はない。夫婦関係や離婚、親子関係、相続・遺産分割、貸金や借金、相隣関係や職場での労働問題、不動産を巡るトラブル、会社同士の問題など。

このような様々な紛争について、できるだけ「気軽に」利用でき、「費用の心配もなく」、「話合い」でなるべく「早く」紛争を解決しよう、というのが、この制度のねらいだ。

誰でも、紛争の実情と相手方にどんなことを要求したいのかを書面に記載して、申立をすることができる。どんな紛争についても申立手数料は15、000円(税込)。

中でも、愛知県弁護士会の場合に特に注目されるのが、今回のB子さんのような建築紛争や医療事故に関する紛争だ。

このような紛争は、建築・医療といった専門性の高い分野でのトラブルなだけに、一般市民にとっては、なかなか自分だけでは太刀打ちができない場合が多い。往々にして相手方(建築業者・医療関係者)に反論できないまま、泣き寝入りをせざるを得ないこともある。

また、被害の迅速な回復が非常に重要になってくるが、民事訴訟を提起しても一定の時間と費用がどうしても必要となってしまう。

愛知県弁護士会のセンターは、このような専門性の高い紛争の解決に備えて、センター内に弁護士委員と専門家委員(建築士・医師など)の名簿が用意されている。この名簿の中から、当該事案の解決にふさわしい「あっせん・仲裁委員」の人選を行う。

センターでの手続は、弁護士会館内の話合いだけにはとどまらない。建築紛争であれば、弁護士委員と建築の専門家委員が現地に出向き、プロの目で現状の把握と原因究明に乗り出すこともある。また、週末や夜間でないとなかなか時間の取れない人には、あっせん・仲裁委員の事務所内で期日を開く、といった臨機応変の対応も可能だ。


■そして、後日…


A: ねぇ、どうなった?
B:





あの後、すぐに弁護士会に申立をしたのよ。しばらくしてセンターの手続が始まって、初めの二回くらいは、お互いの言い分をあっせん委員に説明したのね。雨漏りの写真なんかも出したのよ。そしたら、では次回は現地を見に行きましょう、ということになって、弁護士委員と建築士が家を見に来てくれて。結局、雨漏りの大きな原因は古い家と増築部分との接合部にあることが分かって、業者の方にその意見を伝えてくれたの。業者も、最後には、無償で修理をします、って言ってくれたのよ。
A: よかったじゃない。天井の染みも綺麗になったの?
B:

ちゃんと、クロスを張り替えてもらって新婚旅行から帰ってくる前に綺麗にしてもらったわ。良いところを教え てくれてありがとう。
A: 今度こそ、本当におめでとう、だね。

(お知らせ)

■センター設立10周年記念行事

本年9月28日(金)午後1時から中区区役所ホールにおいて、名古屋市との共催にて、市民向け10周年記念劇・シンポを開催いたします【入場無料】。
■センターの名称変更(予定)

当センターは、ADR法に基づく法務省の認証を受ける準備を進めております。
認証後は、正式名称を「愛知県弁護士会 紛争解決センター」に改める予定です。
愛知県弁護士会あっせん・仲裁センター
(名古屋本部).052(203)1777
(西三河支部).0564(54)9449