言わせてちょ

株主総会を開こう!



間もなく株主総会の集中日と呼ばれる日がやってくる。上場企業は、その準備に追われていることだろう。微力ながら何度か株主総会のお手伝いをさせていただいた立場で言えば、「すごい!」の一言に尽きるほどの労力をかけて各社とも準備しておられる。想定問答集を分厚いファイルで何冊も作られる会社もある。総会の席で株主から質問がなければ、結果的に無駄となる資料を作るのである。もちろん、目を通す担当役員が復習の意味で担当部署の問題点を再確認される意味では、意義ある資料であろうが。

他方、中小企業に目を向けると、会社法が制定されても、従前どおり議事録作成だけで済まそうという会社が少なくない。

確かに、同族会社、またはそれに近い株主構成の会社であれば、実質的に身内の話であるから、株主総会をわざわざ開かなくても家族の話し合い等で済むのかも知れない。例えば、創業者である父親が死亡し、兄弟が株式を相続した上で、経営を行っているケースである。兄弟の仲がよい間は全く問題とならない。

しかし、ひとたび身内の争いが発生した場合には悲惨な結果となる。前記の例でも、兄弟の誰か(たとえば長男)が死亡、または高齢化により後継者選びが問題となったときに、弟を後継者に選ばず、自分の子を後継者にしたがるケースが少なくない。

そうなると面白くないのは弟である。兄だと思えばこそ、これまで我慢して協力してきたのに、自分を差し置いて甥が社長になるのは我慢できないと考えるようである。そうなった時に問題点として挙げやすいのは、長男が株主総会も開かず子を取締役に選任した、という点になりやすい。

裁判所も招集通知の発送等の手続を経た株主総会を開いていない以上、違法と判断することになる。かくして骨肉の争いが繰り広げられるのである。

父親が兄弟仲良くと思って株式を平等に相続させたのに、どちらも五〇%ずつしか株式を有しなければ、全く決議さえできなくなってしまう。

このような事態を避けるために、法で定められた手続を経て株主総会を開くべきなのである。極論すれば、実質的に「父を偲ぶ会」でもよい。先代から受け継いだ会社をどのように経営してきたのか、株主に報告して、必要事項を親族で決議して議事録を作成すれば済む話である。

多数の利害関係者が絡む会社法は、細かく手続が定められている。しかるべき手続を踏んで、株主総会を開いていただきたい。