弁護士に定年はあるか?

〜弁護士に定年はあるか?


 司法試験は難関といわれる。法曹界を目指し、試験を受けつづけるためには、職業に対する純粋なあこがれのほかにそれなりの魅力が必要である。例えば弁護士の魅力の一つは定年がないことだ。体力・気力が続く限り現役が続けられる。現に、数年前には、三重県で百歳を超える弁護士もいた。
 ただし、弁護士となり、経験を積み、また、先輩の姿を拝見するにつけ、病気や事故に遭わず体力や気力を持続させ現役を続けることが結構大変であることが判ってくる。
 さらに、めまぐるしく制定・改正される新しい法律や、IT化への対応など、十分な法的サービスを提供するために不断の努力を要求される。
 これまで、定年がないことは弁護士の魅力と感じてきたが、自らに定年を下さなければならない残酷さも併せ持つものだと感じるようになった。
 最近、弁護士会で弁護士の引退をめぐるアンケートが実施された。回答数が少なく正確な資料となるかの疑問はあるも、働ける限り弁護士を続けることを理想としながらも、何歳まで働く予定かの質問に約半数近くが引退年齢を考え、そのなかで六五歳から七〇歳位とする回答が多かったようだ。その理由としては、依頼者の要望に十分応えられないとする回答が一番多かった。
 弁護士の仕事は、弁護士と依頼者との信頼関係の上に成り立っている。依頼者もその弁護士の能力を認め、処理方針に信頼を寄せるのである。
 これから歳を重ねるごとに自分の定年はいつか自問自答するという厳しい現実に直面せねばならず、その時、依頼者が困らないようにするための方策をあらかじめ打っておく必要性を痛感する昨今である。