少年法

社長

 最近,少年犯罪が多いですね。

弁護士

 確かに報道は多いですね。でも実は,少年事件の件数は増えていないのですよ。

社長

 えっ,そうなんですか?

弁護士  事件数は減少していますが,報道が異常に増えているので,事件そのものが増えているように感じられるのでしょうね。
社長  へぇ〜,知らなかった。ところで,少年事件の報道で「少年法」とやらをたまに耳にしますが,少年法って何ですか。
弁護士  少年が犯罪をした場合,可塑性,すなわち,少年の柔軟性からやり直す能力が大人より高いので,少しでも早く立ち直ってもらおうという観点から,大人と違った手続きが定められています。それが,少年法です。ちなみに「少年」という名前ですが,少女にも適用されます。
社長  具体的にはどう違うのですか。
弁護士  まず,逮捕された段階での対応が違います。大人は逮捕されると,二〇日間警察で身柄を拘束されることが多いのですが,少年の場合,警察署ではなく少年鑑別所というところで一〇日間いることが原則となります。
社長  そのあと,裁判を受けるのですか。
弁護士  いいえ。家庭裁判所で審判を受けることになります。審判までの約三週間の間に,鑑別所の技官という職員や調査官によって,少年の性格や非行の背景が分析され,少年に働きかけがなされます。少年事件ならではの制度ですね。
社長  調査官というのは,どういう人ですか。
弁護士  調査官とは,心理学等を勉強した裁判所の専門職の人で,少年の生育歴,家庭環境,資質等から少年の更生に必要な処分を選択し,意見を裁判官に伝える人です。少年事件ならではの制度ですね。
社長  審判というのは,大人の裁判とは何が違うのですか。
弁護士  大人の裁判と違って公開されませんし,原則として,検察官もいません。処罰することが審判の目的ではなく,どうしたら同じようなことを繰り返さないかという観点から,どのような処分にするかが判断されます。
社長  処分には,どのような種類があるのですか。
弁護士  処分と言っても,初めての事件で内容が軽微である場合等には,処分がない不処分や審判不開始になることもありますよ。その他に定期的に保護司さんの所に行く保護観察や,少年院送致があります。
社長  以前「試験観察」中だという少年を雇ったことがあるのですが,それは処分ではないのですか。
弁護士  試験観察というのは,少年をしばらく社会に戻して,仕事が続けられるか,もう事件を起こさないか等を,約三か月〜半年くらい様子を見るという制度です。その後,もう一度審判を行い,そこで,何らかの最終的な処分がされることになります。
社長  なるほど。一度チャンスを与えてやるってことですか。
弁護士  そういうことですね。
社長  少年事件に詳しいようですが,少年にも弁護士をつけることはできるのですか。
弁護士  もちろんできますよ。少年事件での弁護士は「付添人」と呼ばれます。付添人は,少年に面会に行って審判等の手続きの説明をしたり,親とも面談して,今後の生活をどうするかを一緒に考えたりします。また,調査官や裁判官と面談をして,少年の将来にとってどのような処分が適切か話し合ったり,時には,裁判官や調査官を説得したりします。その必要性から数年後には,「国選弁護人」のような「公的付添人」制度ができる予定です。
社長  へぇ〜。じゃあウチの子に何かあったらお願いしますね。
弁護士  そんなことにならないようにしてください。