新会長インタビュー

〜新会長インタビュー〜
愛知県弁護士会の新会長に、山田靖典氏が就任した。
読者の皆様に代わって、抱負を聞いてみた。

―弁護士になった動機は。
「大学時代のサークルで法学研究会に入っていました。毎週土曜日午後に無料法律相談を行っており、その相談を通して、困っている人の力になりたい、一生懸命働いた人が報われる社会にしなければいけないと思い、弁護士を目指しました」

―目指したとおりの仕事はできていますか。
「弁護士になったばかりの頃は、目の前の事件に精一杯でした。弁護士の仕事は、個々の事件で困っている人の力になれるので、その意味では目指したことを実践できていると思います」

―会長になろうと思ったのは何故ですか。
「もう一つの目標である一生懸命働いた人が報われる社会を作るために、日々の業務だけでなく、弁護士会として活動をしないと限界があると感じたからです」

―具体的には。
「ここ数年の司法改革の中で、弁護士の報酬基準廃止、弁護士資格付与の特例範囲の拡大、弁護士職務基本規程の制定など弁護士制度の根幹に関わる変更がされました。弁護士も収入がなければ食べていけません。昔は、若干ですが経済的に余裕のある弁護士が多かったので、当該事件だけで見れば赤字となることが明らかな事件でも一生懸命働いた人が報われていないと思ったら、赤字覚悟で依頼を受けました。しかし、そのような余裕が、精神的にも経済的にも今の弁護士になくなっているのではないかと心配しています。この点を変えるためには、弁護士会として弁護士の活動分野を広げる必要があります。これによって、弁護士の日々の業務を通して一生懸命働いた人が報われる社会作りをしたいと思います」

―これまで弁護士が関与していなかった分野まで進出するということですか。
「そうですね。たとえば、一生懸命働いてきたのに、不景気になったら会社から退職勧告を受けた人がいるとします。言われた本人からすれば不当な退職勧告であっても、会社内のいじめなどで泣く泣く辞めざるを得ないケースがありました。これなども何らかの形で弁護士が企業に入って目を光らせていれば、不当な退職勧告は避けられると思います」

―その他に、弁護士会の活動として重視しておられることは。
「現在、憲法改正の議論が高まっていますが、戦争を容認しかねない内容も目立ち、危険な議論だと思います。戦争は、国民の生命・身体・財産を侵害する最大の人権侵害ですから、そのような方向への改正は絶対に避けねばなりません。また、高齢者人口の急速な増加に伴う高齢者の権利確保の方法の研究、提言なども行いたいですね。幸いにして、愛知県弁護士会には高齢者・障害者総合支援センター(アイズ)が6年前から設置されており、事例の研究やノウハウの蓄積も行われていますので、より実効性のある権利保護への努力を続けたいと思います」

―ただ、市民の方々から見ると、弁護士会は遠い存在のようにも思いますが。
「そのために、当会の広報活動を充実させたいと思います。たとえば、栄の中日ビルに法律相談センターを開設して間もなく5年になりますが、関係各位の努力にも拘わらず、市民の皆様への周知度が今一歩のように感じています。弁護士会の活動をどんどん広報して、弁護士を身近に感じていただくことを目指したいです。ホームドクターという言葉がありますが、ホームローヤーのようなものがあってもいいと考えています。」

―市民に身近にという意味からは司法支援センターも大切ですね。
「そうですね。法に基づいた紛争解決の制度を利用しやすくするために、愛知県ではこの10月オープンを目指して努力が続けられています。組織のあり方に疑問点がない訳ではありませんが、市民の皆様への法的サービス提供の拠点としてどうあるべきか、更に検討を重ねたいですね」

―最後に読者に一言お願いします。
「弁護士会は皆様の身近な法的パートナーとなるべく努力します。これからもこのページを通して弁護士会の活動をよく見てください」