個々の見解を封殺 〜野田聖子氏の悲哀〜


 小泉総理率いる自民党が衆議院選挙で大勝した。今回の選挙の特徴は、小泉総理が争点を郵政民営化一本に絞り、反対は議員には「刺客」を送ったという点だろう。この結果は、こと郵政民営化については国民の圧倒的支持を得たと言えるであろう。
 しかし、その直後と言うべき10月末に、早くも酒税増税の議論が始まっている。郵政民営化については国民の支持を集め、当初の造反議員もごく僅かの議員を除いては全て賛成に回った。新人の大半については「小泉チルドレン」とマスコミに揶揄される状況にある。おそらく今なら国民に抵抗感の強い増税にも踏み切れる、というのが小泉総理の思惑なのかもしれない。
 しかし、ちょっと待ってもらいたい。確かに郵政民営化については、国民は小泉総理に支持を与えたと言えよう。しかし、増税までの支持を国民が与えたわけではないはずである。今回新たに増税を論議するのであれば、再度衆議院を解散するなり、せめて全国民を対象にしたアンケート的な国民投票くらいはするべきではないのかと思う。
 もともと自民党は、良くも悪くも個人の集まりであり、憲法改正賛成派もいれば、護憲派もいた。右から左まで、正に多様な意見を持っていた集団であった。それが今回変わってしまったようである。
 二大政党制となった以上、党首の意見に従うのは当然との声もあろう。しかし、党首が決めたことについて盲従するだけであるとすれば、そのような存在はもはや国民の代表ではない。もともと民主主義は多様な意見の存在があることを前提とした制度のはずではないかと思う。
 かつてヒトラーは、ワイマール憲法という極めて民主的と言われていた憲法下で首相となり、その後選挙で圧勝して独裁体制を固めた。当初彼を選んだ国民としては、第二次世界大戦を起こすことまでの信任を与えた意思は無かったと思う。しかし、結果は歴史が証明する通りとなった。

 まだ県会議員だった頃の野田聖子氏に会合で会ったことがある。一生懸命理想を語っておられた。現在造反議員の懲罰が審議されている。それがあった故か、野田聖子代議士は、賛成票を投じたようである。郵政民営化の当否はおくとしても、このように個々の議員の政治的見解が半ば強圧的に封殺されるという現状は、正常なものとは思われない。第一次世界大戦を経験し、二度と戦争をしたくないという国民が多かったと思うのに再度戦争に突き進んだドイツの轍を踏むことがあってはならないと思う。