正当な理念と実体が必要〜NHK受信料の支払拒否・保留

 
 新聞報道によると、NHK受信料の支払拒否・保留は3月末までの見込みで45万件から50万件に上る見通しとのことである。NHKの受信料は放送法に基づいて、テレビを設置した者がNHKと受信契約を締結しなければならず、NHKの受信規約では契約に基づき一定の受信料を支払わなければならないとされている。受信契約は約3700万件とのことなので、支払拒否・保留の割合は僅か1.3%であるが、一人年間15,000円の受信料として約75億円の未収となれば、これは放置できない金額であろう。

 公共放送は、その高度な自主性・自立性を基礎として、公平・公正で信頼できるニュース・報道番組や高齢者・障害者に向けたサービスなどをすべての人に提供できるよう制度設計されており、受信料はかかる公共放送を支える唯一の財源となっている。

 ところが、昨今のプロデューサーによる番組制作費の着服、カラ出張や横領、取材費水増し請求が次々に明らかとなり、さらにはNHK会長が国会で参考人招致された衆議院総務委員会を生中継しなかったこと、「ETV2001シリーズ戦争をどう裁くか」の放映問題と政治家との関わりが大きく取り上げられたこと(問題は、放送直前の番組内容を政治家に説明に行くことが何故通常の業務と捉えられるのかにある)が混乱を増幅させた。加えてNHK会長・副会長らが辞任後に有給の顧問に就任し、これが批判されるや顧問就任を辞退する等ドタバタ劇が繰り返された。

 確かに、特殊法人との契約を強制されたとしても、そこに公共放送の正当な理念と実体があれば合理性は担保されよう。しかし、もし実体が伴わないような事態が継続するようであれば、受信料の不払いは限りなく拡大するであろう。

 社会保険庁のように、国民年金未納率が36%を超える異常な事態は、法律上の義務を課する立法事実が真に脱落し、制度が崩壊した例であるが、もって他山の石とすべきである(H・O)。