憲法改正を考える

        国民投票法案制定の動き
             民意の正確な反映を


  憲法改正に関する国民投票法案を作る動きが進んでいる。日本国憲法では、第九六条に改正手続が定められている。各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民投票で過半数の賛成を得ることが要件であるが、国民投票の方法に関する法律が作られていないので、これを作ろうということである。戦争を知る世代が減り、いよいよ憲法改正が可能な政治状況になったということであろう。

 憲法も広い意味の法律である以上、改正手続に関する法律を整備することを否定するつもりはない。しかし、憲法は国家のあり方を定めた、国の基本法である。全ての法律は憲法に違反してはならないし、そのために、最高裁判所に違憲立法審査権が認められたのである。ちなみに憲法第9条は、国の交戦権を放棄し、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しないことを明記している。この交戦権に自衛権が含まれるかどうか議論があることは承知しているが、世界でも有数の戦車や戦闘機、イージス艦まで保有する今の自衛隊が軍隊ではないという理屈は、諸外国には通用しないであろう。だからこそ憲法を変えようということだろうが、個人的には、憲法に反する実態を先に作り、実態に合わないから法律を変えようというのは、極めてアンフェアに思える。夫婦の関係でも、自分で浮気をしておいて、夫婦仲が破綻したから離婚したいという請求については、裁判所も認めていないのである。

 最終的には国民が判断することではあるが、せめて国民投票に関する法律については、国民の意思が正確に反映されるように、個々の条文ごとに賛否を問うなど、きめ細かい配慮をしてもらいたいものである。万が一にも最高裁裁判官の国民審査のように、細かな判断材料も示されず、しかも無印が全て賛成とみなされるような歪んだ制度にしてはならない。変えたい人達が作る法律は、変えやすい法律になることが多いのである。(MG)