法科大学院いよいよ開校!


 ロー・スクール(法科大学院)が、この4月に全国で一斉に開校しましたことが新聞やテレビで報道されています。国公立では、東京大学など21校、私立では早稲田大学など47校、全国で合計68校という驚くべき数です。この地方では、愛知・金沢・中京・名古屋・南山・名城の6大学のロー・スクールが今春開校しました。今後、更に開校を予定している大学もあります。

●ロー・スクールとは?
 ロー・スクールとは、どのようなものか、御存知ですか?この構想が始まったころは、まだ余り知名度がなく、「ロー」というのを「低い」の方の"low"と勘違いされたこともありましたが(それでは「低級学校」になってしまう!)、そうではなく、文字通りロー(法律)のスクール(学校)です。

●アメリカにならって導入
 
ロー・スクール発祥の地は、アメリカです。アメリカでは、100年以上昔から、弁護士になるための学校が大学の中に設置されていて、例えば「ハーバード ロー・スクール」というようなところで勉強して弁護士になるというシステムがとられてきました。今回のロー・スクール(法科大学院)は、そのようなアメリカの制度をモデルとして、この春から始まった制度なのです。

●今までの問題点 
 
日本は、今まで、弁護士の数が極端に少なく、司法試験は合格率の低い難しい試験でした。それは、世の中が必ずしも弁護士を今すぐ必要としていない、ということだったのかもしれません。
 しかし、昔と比べると世の中は弁護士を必要とするようになったのではないか、と言われています(「いやいや、弁護士なんかそんなに沢山必要ないんだ」という異論も根強くありますが)。「弁護士が身近でない」「弁護士がどこにいるのか分からない」「もっと困ったら何でも相談できるようにして欲しい」という声がよく聞かれるようになりました。

●世の中の変化
 
これは、一つには国民の「権利意識」が高まったと言うこともあると思います。昔は誰も「プライバシー」などということは言いませんでしたし、テレビ番組ではしょっちゅう「慰謝料はとれるか?」というような番組が放映されています。「××弁護士の事件ファイル」というような2時間ドラマがしょっちゅうあるのは、きっと視聴率が取れるのでしょう。公害の訴訟や消費者問題の訴訟など、裁判のことが全く報道されない日はない、と言っても良いかもしれません。
 「規制緩和」との関係を指摘する声もあります。つまり、これまで高度経済成長時代の日本は、官庁(行政庁)が「護送船団」方式で、何かトラブルが起こる前に「事前に」様々な行政指導や「規制」をかけて、「効率よく」成長を図ってきました。しかし、低成長ないしデフレの時代に入り、今までの図式が通用しなくなってきました。護送船団方式の弊害も目立つようになってきました。そこで、「事前規制を緩和する。自由競争にする」という方針が取られるようになってきているわけです。この方針に対する当否については様々な意見がありますが、とにかく「規制緩和」は世の流れです。しかし、「規制」には「弱者を守る」という良い面もありました。これを緩和するのですから、「間違ったことはきちんと正す」という機能がもっとしっかりしていないと、世の中無法地帯になって「弱いものいじめ」が横行する不公正な社会になってしまいます。そこで、司法の出番です。もっと、弁護士や裁判官、検察官を増やして、「強くて頼りがいのある司法」にする。そして、「基本的にはみんなを信頼しているから自由にやってもらう。その代わり、ルール違反は許さないよ。徹底的にやるからね」ということにする。これが「行政による事前規制から、司法による事後的救済へ」ということです。こういう考え方は「着せY緩和のセーフティーネットとしての司法制度改革」と呼ばれます。

●弁護士増員
 
ということで、法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の三者の中で最も国民に身近な弁護士を増やそうということになりました。それが、平成13年の司法制度改革審議会意見書です。
 しかし、これまでの法曹養成制度では、沢山の法曹を育てることには無理があるのではないか、との指摘が出されました。みなさん、私たちが司法試験に合格した後、どういう勉強をしたから弁護士登録をすることになっているか、御存知ですか?
 少し前に「ビギナー」というテレビドラマ(月9でしたね)がありました。あのドラマでは、ミムラさん扮する「司法修習生」と言う人たちが裁判官や検察官、弁護士などの「見習い」のように登場していました。私たち弁護士は、若干の例外はありますが、基本的にはあのドラマのような司法修習というものを東京にある「司法研修所」と各地の裁判所等で2年間(今は1年半)経て、「修行」をしてから弁護士登録する、というのが通常のルートでした。
 しかし、弁護士を劇的に増やすには、2年も司法研修所がパンクしてしまいます。そこで、新しくアメリカのような「法科大学院」(ロー・スクール)を作り、この「司法修習」の機能も盛り込みましょう、ということになったわけです。

●ロー・スクール
 ロー・スクールでは、3年(大学院入学前の大学で法学を修めた人は2年)で、みっちりと法律のことを学びます。少人数で、密度の濃い授業をすることになっており、また、これからの法曹にはITなどの設備が必要だということで各法科大学院とも設備に相当な費用を要したことから、学費は相当高額になっており、3年間で300万円前後かかるロー・スクールもあります。

●ロースクール奨学金ちゅうぶ
 そんな中で生れたのがNPO法人ロースクール奨学金ちゅうぶ(名古屋弁護士会後援)です(昨年10月16日の当コーナーでもとりあげていただきました)。この法人は、弁護士が少ない地域(弁護士過疎地)で働く志があるが、資力のない人にロー・スクールの学費を支援するNPOです。全国でも初めての取り組みで、ニュースや新聞でも大きく取り上げられ、広く注目されています。この3月に、第一期の奨学生2名が選出されました。ロー・スクール卒業後は、全国の弁護士過疎地域に赴任し、弁護士過疎の解消に役立つことが期待されています。
 このNPO法人は、会員の会費と寄付金だけで運営されています。現在の会員は、弁護士だけでなく、一般の企業も賛助会員として会員になってくださっています(会費は月額1000円から)。一般市民の方、公認会計士や不動産鑑定士など他士業の方、ロー・スクールの教授など様々な方が会員となってくださっていますが、現在2名の奨学生を年間10名に増やすことが目標です。賛助会員の申込はいつでも受け付けていますので、同法人事務局(052―239―1290)までお問い合わせ下さい。

NPO法人ロースクール奨学金ちゅうぶ 紹介ページ