弁護士報酬が自由化されます
弁護士報酬が自由化されます

1 弁護士報酬の自由化
 最近、人々の権利意識の高まりなどもあって、身近な生活においても弁護士への相談や依頼をしたい場面が益々増えてきています。そんな時、弁護士の専門は何か、弁護士費用(弁護士報酬)はいくらか。最大の関心事は、このふたつにあると言えます。

 平成16年4月から弁護士報酬は自由化されます。弁護士以外の資格者団体では既に自由化されていました。弁護士と依頼者との間で自由に金額や支払方法を決めることになりました。

 この背景には、規制緩和の流れということもありますが、弁護士数もいよいよ増加してきていますし、今後も急速にこの傾向は進みます。この中で、弁護士の業務も各種分野に拡がり、専門化も進むことが大いに予想されます。そこで、弁護士報酬が弁護士会の報酬基準に基づいて一定金額で決まるというのではなく、弁護士自身も業務の合理化等の努力をして、より安価なサービスを自由に提供できるようにしたり、また、弁護士としても専門性を活かしたハイレベルの仕事について相応の報酬を請求することができるようにしたりと、弁護士報酬に「メリハリ」をつけようというわけです。

2 相談者や依頼者の不安
 もっとも、相談者や依頼者の立場からすれば、弁護士報酬が安くなるようであればありがたいわけですが、弁護士会の基準がなく自由と言われますと、逆に、不安やとまどいもあるわけです。

 弁護士報酬に不安が高まれば、一般市民の人々は弁護士に近づきにくくなってしまいますし、そこには言葉巧みな事件屋も現れ、「事件屋に食い物にされる弱い人たち」が出かねません。また、企業としても、弁護士報酬が相当なものか否かとまどう事態も予想されます。弁護士会は、それらの問題を克服していくために、弁護士報酬のアンケート調査の発表など情報提供を行ったり、各弁護士に十分な説明を行うことや委任契約書の作成などを義務づけました。

3 法律相談の勧めー各事務所には報酬基準はあります。
 弁護士への相談や依頼をしたいと考えた場合、ともかく法律相談をすることをお勧めします。特殊な相談はともかく一般的な法律相談では、上記アンケート調査によれば1時間あたり1万円程度が多いようです。その法律相談の中で依頼したい事件の見通しや費用の説明をしてもらい安心できるわけです。

 また、弁護士会としての報酬基準は廃止されますが、各弁護士は必ず個人の報酬基準を各法律事務所に備え置くことを新しく義務化しました。その報酬基準も、弁護士報酬の予測をするのに役立つといえます。

4 見積書作成の依頼
 何人かの弁護士の見解や金額を聞いてから、依頼するかどうかを決めたい。最近、そのような希望をもつ依頼者もいます。新しい制度では、その希望に応じられるようにできるかぎり配慮もしています。相談した弁護士に「見積書」作成の依頼をしてみてください。もっとも、弁護士の場合、見積書作成自体が法律相談にもなります。事案により、見積書作成が有料となりえますので、その点も含め、事前に弁護士に作成の有無とともに確認されることをお勧めします。

5 委任契約書の作成
 更に、新しい制度では、事件を依頼することになりますと、委任契約書を作ることが弁護士の義務になっています。例外として、例えば、法律相談や時間をかけずに文書を作成するような場合などがあります。また、弁護士へ依頼する業務では、相手方の対応を見てみないと事件の規模や複雑さが分からない事案もあります。このような場合、委任契約書を作る時期は、弁護士の受任後、しばらくしてからということもありえます。また、金額についても事件の進展に応じて相当変化することが予想される時には「金額の幅」を示されることもありえます。このような点はありますが、委任契約書の作成により、弁護士報酬の金額、支払い時期等についての予測が容易になるわけです。

6 遠慮せずに聞いてください。ー弁護士の説明義務
 弁護士報酬は、弁護士業務の複雑さから、結構、その仕組み自体が複雑になっていました。弁護士報酬の種類についても、従来、着手金、報酬金、手数料、法律相談料、書面による鑑定料、日当、顧問料、タイムチャージなど何種類もありました。また、これらの種類ごとに支払い時期や算定方法も色々でした。さらに、弁護士報酬とは別に「実費」というものもあります。交通費やコピー代などです。また、裁判などになりますと裁判所に納める印紙代や郵便切手代なども必要となるわけです。

 このような複雑な仕組みがありますが、依頼者にとっては、結局、「この件でいくら必要なのか。」ということが大事なわけです。皆さんは、弁護士に「こんな質問をしたら失礼だろうか」などと遠慮せずに、自分の依頼したい件について、金額、支払時期など弁護士報酬の仕組みを質問して下さい。もっとも、依頼される件によって最終的な金額算定が難しい場合も多くあります。その際には、その見通しがつきにくい理由の説明を受けることによって納得もできるわけです。

 新しい制度でも、弁護士は弁護士報酬について説明をしなければならないことになっているのです。