法律相談番組に思う


1 巷間、法律相談の番組が花盛りです。生活笑百科、ザ・ジャッジ、行列のできる法律相談所などです。同種番組が多数登場するということは、それなりに視聴率もよいのでしょう。普段意識していない法律を、イザという時に利用できるようにしたいということでしょうか。

2 しかし、弁護士の目から見て「あれ?」と思う解答が示されることも少なくありません。これは、行列のできる法律相談所をご覧いただけばお分かりいただけると思います。4人の弁護士が同一の問題について解答をする訳ですが、四人の解答が一致するケースは決して多くはありません。解答が分かれて、それぞれの弁護士が自分の意見の理由を戦わせることになります。

 法律に定められた事項であれば、○×の解答は一致します。しかし、たとえば夫婦間で裏切りと思われる事実があったときに、その事実を法的な離婚原因である「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する事実と評価するか、そこまでひどい事実ではないと評価するかは各弁護士が自分の「法律家としての良心」に従って判断することになるので評価が分かれることになるのです。

3 また、テレビ番組では、弁護士は放映された事実があったことを前提に解答します。しかし、実際の訴訟では、その事実があったことを証明するのに大変苦労するのです。特に「言った」「言わない」の議論になると、「言った」という事実の証明は困難を極めます。たとえば、あなたは友人から中古カメラをもらったのに、後で惜しくなった友人が返せと請求をしてくることがあったとします。この時、あなたは「あげると言った」と反論するはずです。仮に訴訟になって、あなたが「あげると言った」と主張し、友人が「あげるとは言っていない」と主張した場合に、裁判官としてもどちらの主張が正しいか判断に困る場合があります。この場合には、「あげると言った」ことにより利益を受ける側、すなわちあなたが「あげると言った」ことの証明をしなければ、あげるという約束(法的には贈与になります)がなかったものとして判断されることが訴訟の決まりになっています。

 このように実際の訴訟で正しい主張をしても証明できなければ負けてしまうのでどのようにして証明するのかが悩ましいのです。

4 以上のように、実際の訴訟では、事実をどう証明し、証明された事実をどう評価するのかという二つの問題がありますので、法律相談番組を一応の参考として見ていただくことは構いませんが、よく似た問題が発生した場合に、必ず同じ結論になるかは保証の限りではないということをご理解ください。(NU)