成人の日
 今月13日は成人の日でしたが、今年も全国各地で新成人を祝う祝典が開催されました。それまで未成年だった人が二十歳の誕生日を迎えると、その日から大人の仲間入りをして、未成年時代にはできなかった様々な事が出来るようになります。これらは全て法律の規定によって定められています。これらの規定が条件として一定の年齢を要求するのは、心身共に未成熟な未成年者を保護するとともに、未熟な人間の行動によって社会が混乱に陥ることを防止するためです。

 以下では、法律が一定の年齢(二十歳に限らず)に達した未成年者に対してどのような権利や義務を与えているのか、当たり前のようで意外に知られていないものをいくつか取り上げてみたいと思います。この際、未成年のお子さんをお持ちのお父さん・お母さん方は、チェックしておいてください。


< 14歳になると>
 未成年でも14歳に達した者が罪を犯すと刑事上の責任を負わなければなりません。これを刑事責任年齢と言います(刑法41条)。もちろん、未成年の場合、成人とは違って通常の裁判所ではなく、家庭裁判所で審判を受けるのが原則ですが(少年法)、14歳未満の未成年が罪を犯しても刑事責任を問われないのと比較すると大きな違いが生じるわけです。近年、未成年者による凶悪犯罪の多発によってこのような未成年者保護の必要性の可否の議論がなされ、14歳という年齢による区別についてももっと引き下げるべきとの意見もあり、難しい問題です。

<15歳になると>
 自分の意思で他人の養子になることができます(民法797条)。15歳未満の場合に必要だった法定代理人による養子縁組の承諾が不要になるのです。ただし、家庭裁判所の許可は必要です。

 また、遺言をすることができるようになります(民法961条)。遺言というとお年寄りの方だけの問題と思われるかもしれませんが、若い人でも遺言を書くことはできます。ただし、15歳にも満たない者には遺言の何たるかを理解することすら困難と思われることから、民法はこの規定を置いたのです。


<16歳になると>
二輪免許・原付免許を取得できます(道路交通法88条)。
女性の場合は、父母の同意があれば結婚できるようになります(民法731条)。

<18歳になると>
普通自動車の運転免許証を取得できます(道路交通法88条)。
男性は、父母の同意があれば結婚できます(民法731条)。
 男と女とで結婚できる年齢が違うのは、一般には女性の方が肉体的にも精神的にも男性よりも早く大人になるからだと言われています。

また、パチンコ店に入店することができるようになるのもこの年齢です(風営法)。

<20歳になったら>
法律上、一人前の大人として扱われるようになり、親権者の同意なしに様々な法律行為ができるようになります。
そして、誰でも知っているように法律上、飲酒・喫煙ができるようなります(未成年飲酒禁止法、未成年喫煙禁止法)。新成人にとっては、晴れて正々堂々と酒を飲み、タバコを吸えるようになることが、大人の仲間入りを実感できる最大の瞬間ではないでしょうか。

 また、20歳になると競馬の馬券を買えるようになりますが、ただし、20歳以上でも「学生・生徒」の場合は馬券の購入は禁じられています(競馬法28条)。

 ところで、今では共にギャンブルの一種と思われているパチンコと競馬とで許される年齢が異なるのはなんとなく腑に落ちないような気がします。これはパチンコでは法律上、景品の取得は認められていても換金は予定されておらず、ギャンブルとは認められていないからではないでしょうか。

最後に成人の権利として最も象徴的といえるのが選挙権で、選挙の際に投票できるようになります(公職選挙法9条)。この選挙権については、若い人の政治的無関心、投票率の低さの問題を解消するために投票年齢を引き下げてはどうかという議論(例えば18歳まで下げてはどうか)もされています。

 以上、年齢と権利・義務に関するいくつかの法律の例を見てきました。中には有名無実と思われる法律や、ちょっと変では、と感じさせる法律もありました。また、昔、その法律が制定された当時としては、その年齢規定は適切だったとしても、時代の変化とともに不適切となっている例も多いのではないかと思われます。

 多発する少年犯罪に対処するため少し前に少年法が改正されましたが、ここで説明した法律の中にも時代から大きくずれたものについては、今後、廃止・改正されるものも出てくるのではないかと思います。