あなたは大丈夫? ーあなたも気付かないうちにセクハラしてませんか。ー

ーある会社にてー

 A子は、とある会社の企画部のOL。今日も会社での一日が始まりました。・・

A子 

おはようございます。

B課長 

おはよう。おっ、A子ちゃん、今日はミニスカートか。きれいな足してるねー。(と言ってニヤニヤしながら体をなめるように見る)

A子

(げっ、まただよ、このスケベおやじ、毎日毎日いやらしい)

B課長 

ところでA子ちゃん、今年二十六歳だよね。まだ結婚しないの。早くしないと行き遅れるよ。

A子 

はあー・・・(余計なお世話だわ)

B課長 

そうだ、君、今夜、会社の帰り、一杯どうだね。先日の君の企画、採用を考えてみてもいいと思ってるんだけど、もっと詳しく話を聞きたいんだ。

A子 

(本当かしら。あまり行きたくないけど、企画の話を聞いてもらえるなら、行くしかないか・・)わかりました。今夜ですね。よろしくお願いします。


・・・・・そして、A子は、B課長に勧められるまま、とあるホテル内のバーで飲食に付き合いますが、企画の話は、はぐらかされるばかりで、酔ったB課長は、隣に座っているA子の太股を撫で、事前に予約をしておいた、ホテルの部屋に誘いました。A子はこれを拒否し帰宅しましたが、翌日から課長の態度は急変し、A子は職場でB課長から無視され続けました。たまらず、社長に直訴しましたが、まともに話を聞いてもらえず、後日突然、事務方の部署に配置換えさせられ、最後には辞職せざるを得なくなりました。あまりの理不尽さに納得のいかないA子は、悩んだあげくに弁護士に相談し、B課長と会社に対し損害賠償を求めて訴えを起こしました。

ーセクハラとはー

 さて、いわゆる典型的と思われるセクシャルハラスメント(セクハラ)の盛りだくさんの事例をあげてみました。あまりにも典型的すぎて、少し滑稽かもしれませんが、実際に、このような事例の裁判は近年たいへん多くなっています。では、この事例の中で、皆さんは、裁判上でもセクハラと認定されてしまう可能性のある行為を何カ所見つけることができますか。 

 セクハラというもののイメージは持っていてもどこからどこまでがセクハラで、そうでないのか、その判断は意外と難しいものです。

 そこで、労働省(現厚生労働省)は、セクハラに関しての定義付けと分類をし、事業主が拠るべき一定の指針を示しています。また一昨年には男女雇用機会均等法にセクハラに関する条文が新設されました。

 労働省の指針によると、職場におけるセクハラには、(1)職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件に付き不利益をうけるもの(対価型セクシュアルハラスメント)と(2)当該性的な言動により女性労働者の就業環境が害されるもの(環境型セクシュアルハラスメント)に分類されています。

ーセクハラに該たるのはどの行為?ー

 右の事例で見てみると、まず、B課長の最初のミニスカート発言、いやらしい視線、そして二つ目の発言である、結婚についての指摘、またホテルバーでの言動、及びその後の急変した課長の態度は、A子を不快にさせ、その就業環境を悪化させている点でそれぞれ独立した環境型セクハラにあたります。そしてA子が正当な理由もなく突然配置転換されたことは、典型的な対価型セクハラにあたります。注意すべきは、この事例のような事が全て起きて初めてセクハラとされる訳ではなく、B課長の最初の言動だけでも、既にセクハラに該たるとして訴えられてしまう可能性があるということです。

 さらに労働省の指針では、このような職場におけるセクハラを防止するため、事業主にセクハラ防止に関する方針を明確化し、従業員に対するその方針の周知・啓発や、相談・苦情への対応などに配慮することを求めています。

ー法的責任ー

 法的責任については直接セクハラ行為を行ったB課長が民法七〇九条により損害賠償義務を負うだけでなく、会社がセクハラ防止のための対策を怠ったり、現に起きているセクハラ行為を放置していたような場合は、会社も民法七一五条により使用者として損害賠償義務を負うことになります。

 配置転換といった不利益処遇をしたことについては、労働法上の責任が生じます。

 しかしながら、このセクハラ問題は本来法律問題というよりも、それ以前に人としてのマナー・品格の問題です。一社会人として、相手との適切な距離感を保ち、相手の立場や気持ちを思いやる想像力があれば、それほど過剰反応する必要もないはずなのです。