「憲法解釈変更」による集団的自衛権の行使容認に
反対する会長声明
 政府は、安倍首相の私的な諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」から出される報告を受けて、憲法9条の「解釈変更」を閣議決定し、憲法改正手続を経ることなく、集団的自衛権行使を容認しようとしている。また、政府自民党内においては、集団的自衛権行使について、一定の条件を課すことを前提に、集団的自衛権行使を認める議論が進められている。
 しかし、憲法9条に関しては、日本国憲法発布後、憲法の条項の中で最も議論がたたかわされ、政府および国会の憲法解釈が積み重ねられ、確固たる憲法解釈が確立されている。その解釈に従えば、憲法9条は徹底した非武装を宣言しているように読めるが、他方で、憲法は国民の生命、自由及び幸福追求の権利(憲法13条)を保障していることから、他国からの武力攻撃により国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態が生じた場合には、国民のこれらの権利を守るためにやむを得ない場面に限り、その事態を排除するために必要最小限度の範囲で実力行使が許容されるということになる。
 この反面として、政府は「自国が直接武力攻撃されていないのにもかかわらず、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を実力で阻止する、集団的自衛権の行使は、憲法第9条の下において許容される、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまる自衛権の行使を超えるものであって、憲法上許されない」としてきた(1981年5月29日の衆議院の政府答弁書)。これを踏まえれば、我が国への直接の武力攻撃がない以上、仮に条件を付して「限定」的であるとしても、集団的自衛権行使を認める余地はない。
 そこで、政府は、憲法上の集団的自衛権行使を認めたいということであれば、「憲法改正という手段を当然とらざるを得ない」としてきたのである(1983年2月22日衆議院予算委員会・角田禮次郎内閣法制局長官答弁)。従って、政府の「憲法解釈の変更」によって集団的自衛権行使が許される余地はない。
 そもそも、立憲主義国家における憲法とは、行政、立法、司法の全ての国家権力を規制し、そのことによって国民の基本的人権を保障する根本規範である。政府が憲法改正手続を経ることなく、解釈によって集団的自衛権行使を容認するということは、行政権を有する内閣が憲法の規制を否定することに他ならず、立憲主義を破壊するに等しい歴史的暴挙と言わざるを得ない。
 当会は、2013年5月29日「憲法96条の発議要件緩和に反対する総会決議」を行って、立憲主義を否定することにつながる政府の姿勢に抗議し、2013年10月11日には「集団的自衛権の行使容認及び国家安全保障基本法案の国会提出に反対する意見書」を発表し、憲法の恒久平和主義の観点から集団的自衛権行使に対して反対してきた。さらに、2014年3月27日には「解釈改憲によって集団的自衛権行使を可能とする内閣総理大臣発言に抗議する声明」を発表し、首相の解釈による集団的自衛権行使容認の発言に対しても抗議を行ってきた。
 憲法記念日の今日、内閣総理大臣及び国務大臣に対し、憲法尊重擁護義務(憲法99条)を改めて喚起するとともに、立憲主義を破壊するに等しい憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認に対して強く抗議し、政府に対し、かかる暴挙を断念することを強く求める。

2014年5月3日

愛知県弁護士会 会長 花井増實