司法修習生に対する給費制の存続を求める決議

 平成22年5月26日開催の愛知県弁護士会平成22年度定期総会において、下記決議を全会一致により可決しました。

第1 決議事項

 平成22年11月1日より,司法修習生に対して給与を支給する制度(以下「給費制」という。)が廃止され,修習資金を貸与する制度(以下「貸与制」という。)が実施されようとしているところ,当会は,給費制を存続するための法改正を早急に行うことを,国会,政府及び最高裁判所に対して,強く求めます。

第2 決議の理由

1 貸与制による弊害

 現在,法曹(裁判官,検察官及び弁護士)になるためには,大学卒業後2年間又は3年間法科大学院に通うことが必要です。そのため,司法修習生の半数以上が,法科大学院在学時に奨学金等の貸与を受けており,その平均借入金総額は300万円以上に達しています(平成21年日弁連実施アンケート結果)。このうえ,給費制が廃止され貸与制により新たに約300万円の債務を負うこととなれば,司法修習生は,多額の借金を抱えたまま法曹にならざるを得なくなります。加えて,近年の厳しい就職難から就職先が見つからないまま修習を終了する者も多数出ており,法曹になっても経済的状況が好転するとは限らない事態が生じています。このような状況が常態化すれば,経済的事情から法曹への道を断念せざるを得ない者が続出し,高い志や能力を備えた有為な人材が法曹界に集まらなくなることが強く懸念されます。

2 司法修習における給費制の意義

 そもそも法曹養成は,単なる職業人の養成ではありません。国民の権利擁護及び民主主義の確立にとって重要な法の支配の実現にかかわるプロフェッションとしての法曹,高い公共性や公益性を求められる者としての自覚を有する法曹を養成するものです。それゆえ,法曹養成制度の適切な設計と運用は,国及び社会の極めて重要な責務というべきです。司法修習生に対する給費制は,アルバイト等を禁止し修習に専念させる(修習専念義務)と同時に,国費によって養成されたとの自負から法曹としての社会的責任と公共心を醸成するものです。司法修習生に対する給費制を維持することは,法曹養成の根幹をなすものといえます。

3 給費制廃止理由の不当性

 給費制が廃止された理由は国の財政事情にありますが,そもそも裁判所関係の年間予算(司法予算)は,国家予算の約0.4%を占めるにすぎません。三権分立の一翼を担う司法予算がこれほど少額であること自体が諸外国と比べても異常であり,予算を理由に給費制を廃止することは許されません。

4 結語

 以上の理由から,当会は,国会,政府及び最高裁判所に対し,給費制を存続するための法改正を早急に行うことを強く求めます。

2010(平成22)年5月26日

愛知県弁護士会 会長 齋 藤  勉