少年法「改正」に反対する会長声明

 
 2008年6月11日、人を死傷させた一定の重大な犯罪事件について、少年が12歳未満の場合を除いて、被害者や遺族が少年審判を傍聴することを認める少年法「改正」法案が、国会で可決されました。
 被害者・遺族の心情への配慮も、少年の真の更生も、どちらも大切な問題ですが、これらの問題に対しては、一方を高めればもう一方が沈んでしまうというように、少年の権利と被害者の権利を対立的に考えるのではなく、双方が充実したものになるよう、私たちは議論を重ね、知恵を絞っていく必要があります。
 今回の改正法のように、事件から間もない段階で被害者や遺族が審判を傍聴することになると、少年がありのままを表現できなくなったり、形式的な謝罪に終始してしまうことが予測されます。少年は、自分自身や自己が行った非行と向き合うことができなくなり、少年審判の本来の目的を達することはできなくなってしまいます。他方、少年審判を傍聴した被害者や遺族の方は、審判段階での整理されていない未熟な少年の言葉を直接聞くことで、更に悲しみを深め、苦しみを強め、怒りを増幅させてしまうことも、また予想されるところです。
 このような観点から、愛知県弁護士会は、平成20年3月31日付で会長声明を出し、改正に対する反対意見を表明しました。また、今回の法改正に対しては、当会のみならず、実際に少年に関わる関係機関らからも、強い反対の意見やもっと議論を尽くすべきとする意見が多数出されていました。それにもかかわらず、十分な議論も尽くされず、性急に今回の法改正がなされたことを大変遺憾に思います。
 本来、少年が罪を自覚し、内省を深め、被害者等に謝罪、償いを適切にできるようになるまでには、少年自身の人間的成長を促しつつ、少年と被害者等双方に対する適切な社会的支援とそれらを通じての相互の関係の熟成が必要となるはずです。改正法にはそのような配慮が全く欠如しています。
 また、改正法は、刑事責任を問うことができない14歳未満の触法少年について、12歳未満の少年にだけ被害者等の傍聴を許さないという区別を設けていますが、どうしてそのような年齢区分を設けたのかについて何ら合理的な説明がなく、政治の場での妥協の産物としか考えられません。
 愛知県弁護士会は、今回の改正について再度見直しがなされることを強く求めるとともに、被害者・遺族の審判傍聴が与える影響の深刻さに鑑み、家庭裁判所に対して、少年審判の本来の機能を損ねず、被害者・遺族の心情に真に配慮した法制度の運用がなされることを求めます。

2008年(平成20年)6月12日

愛知県弁護士会 会長 入谷正章







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