労働審判制度  &  


 労働審判制度というのはどういう制度ですか?

 労働審判は、労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた紛争に関して、次のような特徴を持つ新しい解決制度です。
 1つ目は、手続きの主体として、裁判官(労働審判官)のほか労働問題に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名が加わって組織される労働審判委員会が行う手続です。
 次に、審理の回数を特別な事情がある場合を除いて3回以内で迅速に行うとされていることです。
 そして、この手続の中では調停の成立が期待されますが、その見込みがないときに当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするための審判がなされることです。
 また、今も調停という制度はありますし、労働局等で「あっせん」などの手続も用意されていますが、相手方が出頭しないと手続が進まないという問題がありました。この審判では、相手方不出頭でも手続が進められます。「訴訟」と「調停」の中間的な制度と言えましょう。
 平成18年4月1日から、この労働審判制度は実施されています。 
 

 実際に労働審判ではどのように解決されているのでしょうか?

 名古屋地裁では、平成18年4月から12月までに54件の申立があり、年度内に30件の処理がなされました。そのうち73%が調停成立でした。
  そして翌年は、平成19年1月から12月までに111件の申立があり、年度内に116件の処理がなされました。そのうち85%が調停成立となっています。これは全国平均よりも10%ほど高い数字です。
  また同様な時期区分で、調停や労働審判までの解決までの期日について見ますと、平成18年は2回目までの終了が46%であるのに対し、平成19年は74%となっています。平均審理期間も平成18年の82.4日に対して、平成19年は68.1日となっています。つまり名古屋地裁の労働審判の姿は、申立事件のほぼ4分の3の事件が2回までの労働審判期日(約2ケ月と1週間程度)で終了しており、終了事由のうち約85%が調停成立という解決の仕方をしているというイメージです。
  こうした実態を踏まえて労働審判を考えて頂ければ有り難いと思います。

 労働審判はどんな人が利用できますか?

 申立てにより解決を求められる紛争の種類は個別労働紛争と言われるものです。これは、労働者が個別的に当事者となって事業主(使用者)と争う形の労働紛争で、例えば解雇・雇い止め、労働条件の変更、出向・配転、賃金等の不払いなどの紛争を言います。
 労働者でも事業主(使用者)でも申立てをすることができますが、実際上は労働者が多いと思われます。
 ただし公務員法を適用される人は除かれます。
 また、事案の性質からみて、審判手続きが紛争の迅速かつ適切な解決のために適当でないとされる場合には、審判が終了されることもあります。これは、例えば組合間差別や均等待遇の紛争のうち複雑なものなどが考えられます。 
 

 申立てをするには?

 労働審判を扱うのは地方裁判所です。愛知県の場合、現在までのところ、名古屋地裁の本庁(中区三の丸)だけで実施され、岡崎、一宮、半田、豊橋などの支部では行われていません。
 申立てをするには「申立の趣旨及び理由」を記載した書面を提出する必要があります。「趣旨」とは、申立てをする人が解決によって求める内容を簡潔にまとめたもので、例えば「相手方は申立人に対し金○○万○○○○円を支払え」、「相手方が申立人になした平成○年○月○日付け配転命令が無効であることを確認する」などです。
 「理由」とは申立の趣旨(請求)を基礎づける事実の主張を言います。例えば「相手方は平成○年○月○日、申立人を即時解雇するという意思表示をした。しかし、解雇予告手当を支払っていない。解雇予告手当としては金○○万円が相当である」などの主張です。
 

 労働審判の審理はどう進みますか?

 3回の期日で審判するためには、事実や証拠などについて当事者双方が相当な準備をすることが必要です。
 できるだけ第1回期日から充実した審理(事案の解明と立証)をして、争点をはっきりさせ迅速かつ適切な審判を行うことが求められます。当事者が証拠提出を渋ったりして事案解明が進まないと困るので、審判委員会は職権で事実調査、証拠調べなどができるとされています。
 このように審判委員会が期日を主催して進行し、適宜調停も行うことが出来ますから、普通の民事裁判のように書面のやりとりだけで終わる手続ではありません。そのため、1回の期日の時間も1〜3時間程度を必要とすることが多いです。
 なお手続は非公開とされています。
 

 労働審判員はどんな人ですか?

 労働審判員は、労働関係に関する専門的な知識経験を有する人とされています。現時点では全国で使用者団体、労働団体から推薦された各々約500人ずつ(名古屋地裁では22人ずつ)の労働審判員が任命されています。
 既に、労働審判員の候補者に対して数日間にわたる研修受講が完了しています。
 労働審判員は労使の利益・立場を代表する者ではなく、専門的な知識経験を活かして適切な審判・調停を行うことが期待されています。 
 

 審判の結果に不服があるときはどうしたらよいですか?

 審判は権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した内容であることが必要ですが、その結果に不服がある場合には、審判書送達または審判の告知を受けたときから2週間以内に、裁判所に「異議」の申立てをすることができます。異議があると審判は失効して、審判申立があったときに遡って訴訟提起があったものと扱われます。(申立書が訴状になります)
 そして適法な異議であれば通常の民事訴訟手続に移行しますが、審判手続の資料は申立書だけが引き継がれることになりますから、民事訴訟手続では新たに主張立証をしていくこととなります。 
 

 弁護士会に行けば色々と教えてもらえますか?

 愛知県弁護士会では、労働審判に関する専門相談窓口を設けましたので、是非、ご利用下さい。
 

 この手続きは誰に依頼できますか?

 労働審判については弁護士が代理人となることができます。その他には「当事者の権利利益の保護及び労働審判手続の円滑な進行のために必要かつ相当」な人も裁判所の許可を得て代理人になることもできますが、簡易な制度とはいえ事件を迅速かつ効果的に解決するとなると専門弁護士の関与が望ましいと考えられています。
 愛知県弁護士会としても、労働審判専門相談窓口を設置しましたが、今後とも更に労働審判制度が利用しやすいものとなるように裁判所とも協議をしながら、努力していこうと考えています。
  その1つの試みとして平成20年10月以降、名古屋法律相談センターにおける有料法律相談の日のうち特定の日を「労働相談集中相談日」と定めて、労働事件について知識・経験のある弁護士が労働相談を担当する運用を開始します。是非ご利用下さい。  

(初掲:平成17年4月、改訂:平成18年11月、三訂:平成20年8月)






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