司法を国民の手に


1.弁護士報酬を敗訴者に負担させるのは裁判の利用を萎縮させる

2.質の高い法科大学院を全国各地に設置しよう

3.身近で親しみやすく開かれた裁判所・裁判官へ

4.司法改革には抜本的な財政措置が必要です




1.弁護士報酬を敗訴者に負担させるのは裁判の利用を萎縮させる

一般的敗訴者負担制度の導入に強く反対する
 弁護士報酬の一般的な敗訴者負担制度は、裁判に負けた時に相手の弁護士費用を支払わせられることを心配して、市民が訴えを起こしたり応訴するのをためらわせます。
 また、とりわけ社会的に新しい問題(たとえばハンセン病裁判など)で裁判を起こしにくくなります。これは、社会の変化に対応して判例が発展するのをさまたげるものです。

司法制度改革審議会も、「一律に導入はしない」とした
 司法制度改革審議会でも激論がありました。その結果、一律に導入はしないと明記されたのです。敗訴者負担制度が訴えの提起を萎縮させる場合には、適用すべきではありません。

詳しくは「弁護士費用の敗訴者負担制度Q&A」をご参照ください。

2.質の高い法科大学院を全国各地に設置しよう

 法科大学院構想は、現行の司法試験という「点による選抜」の欠陥を改善し、プロセスとしての法曹養成をはかろうとするものですから、公平性・開放性・多様性・地域性が重要です。

法科大学院の質の向上を図るため、複数の評価機関による第三者評価を行う
 法科大学院の質は、複数の評価機関による第三者評価によって維持・向上されるべきものです。そのためには、運営費を国が補助するなど、民間の評価機関が評価活動を実施できるような条件が整備される必要があります。

新司法試験のバイパスは例外の場合に限る
 法科大学院を修了しない者に対する予備試験(新司法試験を受ける資格を得るための試験)ルートというバイパスを幅広く認めると、プロセス重視の法科大学院をつくった意味が失われます。

地域に根ざした法科大学院を全国各地に設立する
 全国各地で司法過疎の解消と地域の活性化をめざして、地域に根ざした自主的な法科大学院づくりが地域ぐるみの運動になっています。これを全国的に進め、地域に質の高い法科大学院を作ることを、文部科学省などに求めていきます。

資力のない者も入学できるよう、法科大学院に対する財政的援助や奨学金などを充実させる
 法科大学院をお金に余裕のある人だけの制度にしてはなりません。そのため、法科大学院に対する財政的援助や学生への奨学金・政府保証ローンなどの整備が必要です。

司法修習生に対する給費制は廃止しない
 大学を卒業したあと、原則として3年間の法科大学院で勉強し、さらに1年程度の司法修習が予定されています。
 奨学金の整備・充実が必要ですが、司法修習のための何らかの給費制も確保しておかないと、経済的な事情から法曹界へすすむのを断念する人が続出しかねません。

3.身近で親しみやすく開かれた裁判所・裁判官へ裁判官の選任に関する情報を

 裁判官の選考に市民の声を反映するため、市民の代表が参加する「下級裁判官指名諮問委員会」が発足し、全国8つの高等裁判所所在地にその「地域委員会」が設けられました。弁護士会でも裁判官の適格性に関する情報を受け付けていますので、ぜひ情報をお寄せ下さい。

裁判官の人事評価に外部の声を
 これまでブラックボックスであった裁判官の人事評価については、本人への開示、不服申立制度、外部情報の受け付けなど一定の改善がなされましたが、まだまだ不十分です。市民代表が入った第三者機関が不服申立の処理を行なうこと、転勤は応募制とすること、裁判官の報酬体系を簡素化することが必要です。

裁判所の運営に市民の声を
 裁判所の運営に市民の意見を反映させるため地方裁判所委員会、家庭裁判所委員会の制度が発足しました。身近で利用しやすい裁判所とするためには、利用者の声をこれらの裁判所委員会に届けることが重要です。

できるだけ多くの判事補を世間の風にあてる
 判事補(裁判官になって10年未満の人)が裁判官の身分を離れて、弁護士経験を積むことができる制度も始まります。弁護士経験を積む裁判官の数を今後増やしていくことが必要です。

裁判官を大幅に増員する
 日弁連の試算では、現在の事件数を前提にしても、裁判官の過重負担を解消し、丁寧で充実した審理を行なうためには、裁判官を2倍に増やす必要があります。今後の事件数の増大を考えれば、さらなる増員が必要となります。 

4.司法改革には抜本的な財政措置が必要です

司法改革を実現するためには、抜本的な予算措置が必要
 今回の司法改革は、法の支配を社会の隅々まで行きわたらせ、わが国のあり方を変えることを目ざして行われる、50年に1度、100年に1度の大改革です。お金がかかるのはやむをえないことです。
 司法制度改革審議会の意見書も、「政府に対して司法制度改革に関する施策を実施するために必要な財政上の措置についての特段の配慮をなされるように求める」とわざわざ明記し、さらに衆議院や参議院においても、「政府は、司法制度改革を実行効力あるものとするために、…特段(ないし万全)の予算措置を行なうように努めること」と付帯決議をしています。
 裁判員制度の新設、裁判官・検察官の大幅増員、国費による被疑者弁護制度の新設、法科大学院の創設、民事法律扶助の拡大など、大きなお金がかかります。財政上の理由から司法改革を見送ったり、後退させたり、制度設計を矮小化してはいけません。

法総合法律支援律事業に対しては十分な財政上の手当てが必要
 これまで、民事法律扶助事業に対する国庫補助金は、年々増額されてはきましたが、もともと補助金の水準が低く、昨今の長引く経済不況を背景に増え続ける事件数の増加にも追いつかないことから、財団法人法律扶助協会は厳しい事業運営を強いられており、年度途中での扶助申込の受付中止という深刻な事態になったこともあります。また、国選弁護についても、支払われる報酬水準が低く、謄写費用も出ないことから、弁護士のボランティア精神でかろうじて制度が支えられています。被疑者段階の当番弁護士や被疑者援助事業にいたっては、まったく国庫補助がなく、弁護士会や扶助協会の自主的な事業として行なわれてきました。
 今回、制定された総合法律支援法は、民事法律扶助や被疑者段階からの国選弁護はもとより、司法アクセスの充実や司法過疎対策なども含む、総合法律支援の実施が「国の責務」であることを明確にしました。そして、この法律の制定にあたり、衆参両院で、「十全の財政措置を含む必要な措置を講ずるよう努めること」との附帯決議がなされています。総合法律支援事業を運営する日本司法支援センターは、2006年度春頃に設立され、同年秋頃から事業を開始しますが、「民事、刑事を問わず、あまねく全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現する」(3条)ためには、十分な財政上の手当がなされることが不可欠です。






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